今年の展覧会初めは、千葉市美術館の「鳥文斎栄之」展の内覧会だったのだが、そのプレス説明の際に、今後の展覧会紹介で、Nerhol(ネルホル)の展示があるとのことだった。
不勉強ながら、アーティストデュオ・Nerhol(ネルホル)について全く知らず、さっそく調べてみると、東京・表参道のギャラリー「The Mass(ザ マス)」にて、彼らの展覧会「REVERBERATION」が開催中とのこと。しかも2024年1月21日(日)まで会期延長で開催されるとのことで、これは「観に行け」との天からの思し召しと思って、本日ギャラリーを訪ねた。
Nerhol(ネルホル)とは
Nerholは、飯田竜太(いいだ りゅうた)と田中義久(たなか よしひさ)の2人によるアーティストデュオだ。もともとそれぞれで活動していたが、2007年より、Nerholとして活動をスタートさせている。近年取り組んでいるのが、特定のモチーフの連続写真を何枚も積み重ね、写真であり彫刻である作品だ。
本展では、帰化植物を写した連続写真40枚を重ね、それを彫り造形した作品群が展示されている。
帰化植物とは、本来は別の場所で生息していた植物が、何かしらの理由である場所へと運ばれ、そこで野生化した植物のことを指す。流れ者であり、その土地に根差した者、そんな特殊な帰化植物を、連続写真として撮影し、その写真を物理的に積み重ねた後に、掘削するように写真の地層を掘り進める。
離れた場所から見ると、まるで細かく振動して揺れる水面の波紋、あるいはマーブル状の模様のように見える。そして少し近づくと、それが何十枚にも重ね合わせて作られた「写真の層」であることに気づき、その凹凸の立体感も相まって地層のように思えてくる。(まるで地図の等高線を見るかのようだ。)
写真の層は、時間の層、記憶の層となる。なだらかな傾斜になった写真の図像は、本来の花の原型がぼやけてしまう。見る者はまるで記憶の彼方にある映像を思い出すような感覚に陥る。クリアに見ようと思えば思うほど、その「層」がそれを阻む。
「層」はまさに時間の厚みであり、深く彫れば彫るほど、本来のクリアであったはずの像がぼやけていく。「記憶の時間」というものを物理的に示されたような感覚だ。
新作のインスタレーション作品も展示
いくつかの棟に分かれるギャラリースペースでは、各展示室で写真彫刻の作品から会場内で制作されたインスタレーション作品も展示されている。
このまるでコンクリートブロックのような灰色の物体も、特別な紙を何十枚も積み重ね、それを後から彫った作品だ。この作品の制作はギャラリーのインスタグラムのアカウントでライブ配信されていた。
閉幕まであとわずかだが、ぜひ多くの人に見てもらいたい展示だった。
千葉市美術館での展示も期待したい。
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