千葉市美術館のコレクション展にて、小泉癸巳男《昭和大東京百図絵》が展示されるというので、「これはもう絶対見ておかないといけないやつ!!!」と思い駆け付けた。
きっかけは「歌舞伎座」

なぜ、このシリーズに惹かれたのか。そのきっかけはこの作品だ。「第46景 木挽町歌舞伎座」。実はこの作品が、昨年の11月の歌舞伎座公演「吉例顔見世大歌舞伎」の筋書の表紙に使われていたのだ。
歌舞伎座の唐破風屋根と白い漆喰の壁が、闇夜に浮かび上がる。煌々とライトアップされて、その威厳ある佇まいが一層強調される。そしてその白と黒の対比の中で、懸垂幕の赤が効いている。「歌舞伎の殿堂」である歌舞伎座の姿が強烈に印象に残った。
小泉癸巳男《昭和大東京百図絵》
100点が揃っている例は少なく、千葉市美術館に寄託(個人蔵)されているものは、昭和15年に改めて揃え、木箱に収めて販売されたものだという。箱の蓋には小泉自身によるタイトルの墨書が記されており、2枚の目録もついてる。


いざ作品を実見!
展示では、100点のうち約半数が展示されており、全て写真撮影OKでした。その中から、いくつかを紹介します。
第1~50景


賑々しい町並みは鮮やかな色彩と高いコントラストで描き、江戸時代からの名所などはしっとりした画面で情緒豊かに描く。町の風情に合わせて1つのシリーズの中でも趣が全く異なる。

左下:第5景 若葉と日比谷公園のつゝじ、右下:第12景 春の銀座夜景
「千住タンク街」は彩色がほとんど施されず、タンクの赤と壁に映る影が際立ち、工場街の人気のなさが際立つ。浅草は、あえて門をくぐって境内から振り返ったアングルというのが洒落ている。もうこの時期には日比谷公園のつつじはあったのか、など新しい発見もある。
この昭和初期という「近くて遠い」距離感が、江戸時代の名所絵を見るのとはまた違う面白さがある。現代でも残っている建物や光景もあったり、失われてしまったものもあったり、そのちょうど狭間のような時期。これは観る人の世代によっても色んな感想が出てくることだろう。



まるでギリシャの神殿のような趣を湛える塵芥処理工場。そうした”美の神殿”イメージのギリシャ建築と、殺伐とした(モノとして捉えられがちな)工場を重ねることで、「労働者」という存在の価値を問い直しているのだろうか。


上野の動物園や桜の名所でもある王子の飛鳥山公園。人々でにぎわう場所・コトは今も昔もそう変わらないようだ。

第51~100景


「長閑な光景だなー」とぼーっと見てたらドキッとしてしまう砲台。歴史の残滓である砲台の重々しさと、入道雲と青空の長閑な風景、そのギャップが新鮮な驚きをもたらす。

「これぞ近代の象徴」ともいうべき、飛行機に鉄道。今でも普通に使っている飛行機(場)や地下鉄がこうして描かれているとタイムスリップしたような不思議な感覚になる。


左下:第84景 東京駅と中央郵便局 右下:第97景 江戸川区・葛西・堀江町
左下の「東京駅と中央郵便局」は、今はKITTEになっている。

左下:第74景 深川八幡・羽子板市 右下:第80景 日暮里・諏訪神社の見晴し
右上の桜田門。「桜田門外の変を意識しているのかな」と思ったら、目録に記されている小泉本人の説明でもそのように書かれていた。
千葉市美術館開館30周年の今年、もしかしたら残りの作品も年内に見ることができるかしらと期待しつつ、千葉市美を後にして、「令和の東京」に戻るのであった。

コメント