プロダクト・デザイナーの秋田道夫氏。X(旧twitter)に投稿される彼の言葉はシンプルだけど本質的。そんな秋田氏の日々の生き方、考え方について綴られた『機嫌のデザイン』。デザイナーでなくても、今日という日をどう過ごすか、それは今日という日をどう”デザイン”するかのヒントが散りばめられた一冊。
📖 書籍情報
- 書名:機嫌のデザイン──まわりに左右されないシンプルな考え方
- 著者:秋田 道夫
- 出版社:ダイヤモンド社
- 発売日:2023年3月28日
- ISBN:978-4478117321
- ページ数:256ページ
- 価格:1,650円(税込)
この本を手に取った理由
テレビ番組に秋田さんが出演しているのを見て、その物腰の柔らかさに惹かれた。デザイナーと聞くともっと「俺の話を聞け!」的な、自分のスタイルを主張するような人をイメージしがちだが、そんな雰囲気がまるでしない。でもなんだか手掛けた製品も、お人柄も「心地いい」感じがする。
そのエッセンスを少しでも自分に取り入れたくて、本書を手に取った。
印象に残った言葉
- 「親切の極みは、その親切を相手に悟られないこと」
(「気を使う」では相手に負担をかけてしまう。「気が利く」は相手に負担をかけない配慮) - 「景色としての自分を美しく保つ」
- 「自分を柔らかく、気持ちをリッチに。人生のデザインは濃い目の鉛筆でサラッと描く。」
感想
まず、読み進めてその文体(秋田さんの言葉)の軽やかさが響いてきた。シンプルで核心を突く言葉。だけど人の心をえぐる鋭利さはない心地よさ。茶室にかかっている一行書をよむような感覚だ。
その中でも特に上記の言葉が私の心にスッと入って来た。
「親切の極みは、その親切を相手に悟られないこと」は、とあるコミュニティで、過剰に目上の人に気を使っている人がいて、その人の振る舞いに感じていたモヤモヤを指摘してくれた気がした。そうか、見ていて何か落ち着かないというか気になってしまっていたのは、「気が利く」ではなく「気を使う」状態だったからなのだなと。反面教師ではないが、自分も「気の利く」人で荒れるようにと思った。
そして「景色としての自分を美しく保つ」は、今度は己の未熟さを指摘された気がした。ついお店などで、思っていたサービスと違った(自分の場合は何かしらの条件が合致せず、サービスが受けられないなどなど)時に、がっかり感、徒労感、などで、どうしても不機嫌が露になってしまう時がある。そうした自分を反省はするのだが、まだできないことが多い。「景色としての自分」の意識を常に持っておきたいと思った。
そして、「景色としての自分を美しく保つ」ためにも、具体的にどうするかという点で、「自分を柔らかく、気持ちをリッチに…」という言葉だ。しかも「濃い目の鉛筆」という多くの人が何となく持っている”感覚”を具体的なイメージとして挙げていることが、さすがだ。「自分を柔らかく」も「気持ちをリッチに」も、何となくは分かるけど、どちらも抽象的なので「つまりどういう事?」となる人もいるだろうが、「濃い目の鉛筆で描く」イメージが、心のゆとりの持ち方のイメージを補強してくれる。
私自身は結構筆圧が高い方なので、間違っても濃い目の鉛筆でグリグリと書かないようにしないと。
こんな人におすすめ
・日々の生活に「(心の)ゆとり」を持ちたいと思っている人。
・仕事が思うようにいかないと思っている人。
・仕事でもプライベートでも人との付き合い方に悩んでいる人。
・何となく「人生が上手くいかない」と思っている人。
・自分だけが損をしているような気がする人。
プロダクトのデザインは限られた職業の人のみにしか当てはまらないことだが、「人生」のデザイン、「日常生活」のデザインは、全ての人に当てはまる課題だ。シンプルに、心地よく、そして美しく、人生をデザインするためには、まずは「機嫌」をデザインすること。
シンプルだけど大切なことを教えてくれる一冊だ。
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