サントリー美術館の「エミール・ガレ」展が開幕した。
実は正直、今回は鑑賞を見送っても良いかなと思っていた。これまで同館でのガレ展は何度も見ていたからだ。ところが、そんな風に思っていた自分の頬をビンタしてやりたいほど打ちのめされた。
エミール・ガレとは

エミール・ガレは、19世紀フランスのガラス工芸家。アール・ヌーヴォー様式を代表する人物で、自然をモチーフにした繊細なデザインと高度な技法を駆使しガラス作品や陶器を制作した。特に、被せガラスやエッチング技法を用いた装飾が特徴である。また、植物学や文学への造詣も深く、作品には詩的な要素が込められている。


本展の特徴
サントリー美術館ではこれまで度々ガレの展覧会を開催してきたが、本展がこれまでのガレ展と異なる点は次の2つだろう。
①サントリー美術館以外の所蔵先の作品も多く展示
②ガレ自身の生涯やパーソナリティにも焦点を当ていている。
それぞれについて、詳しく見ていこう。
サントリー美術館以外の所蔵先の作品も展示

本展の大きな特徴は、サントリー美術館のコレクション以外からも様々な美術館や個人から、ガレの作品を集めていることだ。そしてそれらの作品がいずれも目新しいのだ。「ガレってこういう作品も作っているのか」と、発見の連続だった。ガレの作品を十分観た気でいた自分を反省する。

こちらの作品、まるで中国の「草虫画」、あるいは伊藤若冲の《菜蟲譜》のような趣があって面白い。
ガレ自身の生涯やパーソナリティにも焦点
今回の展覧会では特にガレのパーソナリティにも焦点が当たっていた。これまでの展覧会では、ガレの画業については触れられていても、その生涯やパーソナリティはそこまで見えてこなかった。
本展ではガレが知人に当てたメッセージカードや、娘の結婚式にデザインした器と記念写真なども展示されており、1人の人間としてのガレの姿が浮かび上がる。



もちろんサントリー美術館コレクション作品も見どころ

外部所蔵の作品や資料など貴重な展示も見どころだが、もちろんサントリー美術館コレクションのガレ作品も相変わらず大充実している。


ガラスの器だけでなく、家具などもデザインしたガレ。飾棚「森」は、ガレの芸術世界が凝縮されたような作品だとつくづく思う。
ガレ展の会場を歩く時は、湿潤な森を歩いているような感覚になる。

茶会で使うなら…
茶道をする者の”病”と言っても良いのが、「なんでも茶会に使うなら」という眼で見てしまうこと。ガレ展でもついついそういう眼で見てしまう。

こちらの花器は形状が曾呂利(無地の鶴首型の花器)そっくりで、その形に沿うように蜻蛉が下降している様が表されているところが、寂寥感もあって渋い…

こちらの壺は「これぞ水指!」と言わんばかりに水指に最適な大きさ、風情。秋から冬にかけて使いたい。

こちらの壺は香炉に良いかな。ちょっとダークな雰囲気だから他のお道具との組み合わせが重要になるけど…などと妄想しながら見るのも一興。
これまでサントリー美術館のガレ展に行ったことがある人も、初めての人も、この機会に「エミール・ガレ」の芸術世界を彷徨い歩いてほしい。
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