s**t kingz日本武道館「THE s**t」(中)

エンタメ

『未来紙 feat. のんぴー』

MCで込み上げてくるkazukiの姿。今までの仲間やファンへの真摯なメッセージ。正直kazukiさんはラストまでクールにカッコつけた姿を見せるタイプだと思っていたから、MCの気負いもない穏やかな表情に戸惑った。待って、ここで泣かせに来るなんて聞いてない!

のんぴーの唯一無二の歌声。遠くまで通るのに、どこか苦しく絞り出すような声で歌う等身大の思い。踊ピポでもこれがkazukiのソロ曲なのかと意外に感じたが、普段バッチバチに決まってるダンスをする彼だからこそ、素直な姿を見せられると込み上げてくるものがある。彼らしい細かくて切れのある動きに、しなやかな指先の動きに、彼の飾り気のない素直な思いが乗っかってそれが切ない。

そんなkazukiの素直な思いが会場に染み渡る。その余韻をぶっ返すようにあの曲が鳴り響く!!!!!

せが家

ファンにはお馴染みのあの一家が武道館に来る!!!!!「せが家」パートでガラっと空気を変える。もうここからはせがママの独壇場だ(笑)

せが家とは「浅はかなドラマ=浅ドラ」として誕生したファミリー。家族構成は、
お父さん(Oguri)、お母さん(shoji)、たかし(NOPPO)、カズー(犬・kazuki)の3人と1匹。名前の由来は子供が「せが・たかし(背が高し)」。お母さんの圧強め。

たかし君の絵日記を披露する設定で、シッキンの過去のパフォーマンスを振り返る。「家族総出」が読めず「家出」といってしまうたかし(NOPPO)のご愛嬌っぷりも健在で、シッキンのもう1つの魅力「わちゃわちゃする4人」に会場は大盛り上り(ただしママのギャグを除く)。

2013年シッキン初の舞台「THIS SHOW IS s**t」、2014年「WEEKDAY PLAYDAY」、2016年「Wonderful Clunker」、2018年「The Library」、2021年「HELLO ROOOMIES!!!」と、彼らのライフワークである無言芝居から、それぞれのパフォーマンスの一部を披露する。

まさか『ハロルミ』のA子とせが家が出会う世界線があったなんてというファンには歓喜な共演も実現した。

Too much to choose feat. FiJA/『Live like you’re dancing feat. ZIN』

賑やかな「せが家」パートが終わると、一度バンド演奏となる。

そして、NOPPOのソロ。『Too much to choose feat. FiJA』で、海の底のイメージでゆったりと踊るNOPPO。踊ピポでは照明で海の底のイメージを演出していたが、今回は背景に海の映像を流しそのイメージを鮮明にして踊る。フリースタイルで踊る姿は「踊る」というよりは、「揺蕩う(たゆたう)」といった方が適切かもしれない。背後から差す光によってシルエットとなった姿には、海に落ちた青年が闇に溶ける、そんな神話でもあったかな…と観るものを幻想の世界へ、そして幽玄(ゆうげん)へといざなう。

「ニンフ…」そう思った。ニンフとは、ギリシャ神話で山、川、樹木、花などの精のことで、歌と踊りを好む。若く美しい女性の姿とされるが、彼の身の蠱惑(こわく)的なしなやかさ、儚げな美しさは、彼にニンフのイメージを重ねても何ら違(たが)うことはないだろう。

《追記》
その後、背後から差す光でシルエットになるシーンについて、「このシルエット何か見覚えがある」とずっと私の記憶の片隅を疼(うず)かせていたのだが、それがマティスの『JAZZ』シリーズの内の《イカロス》であると気づいた。
ギリシャ神話で、青年イカロスは蝋の翼をつけて飛ぶが、父親からの忠告を聞かず、太陽に近づきすぎて蝋の翼が溶けて海に落ちるという物語だ。光に近づきすぎて落ちてしまうというストーリーも、シルエットも、今回のパフォーマンスとシンクロする。



そんな蕩(とろ)けるような時間のあと、NOPPOのMCを挟んで『Live like you’re dancing feat. ZIN』へとつながる。NOPPOプロデュースのこの楽曲は、ZINの囁くような、呟くような歌声が鼓膜をくすぐり、いつの間にか言葉から意味が溶け出し、音となって脳に響く。そんな甘美な曲に対し、MVでは鏡とカメラワークを駆使して、4人が入れ代わり立ち代わり現れては消え、消えては現れる。実像と虚像が交錯する映像は、楽曲の甘美さと相まって見るものを甘い幻惑の世界に引き込む。

そのカメラワークによる世界観をこの武道館という場所で再現したことに驚いた。スマホライトを使った演出とカメラワークで会場全体で幻想的なムードを創り上げる。柔らかく白い光に包まれ穏やかな笑みを浮かべ、4人が入れ替わり立ち替わり現れて、踊る。視線で、手招きで、指先で、…こちらの肌をすっとなぞるかのように、優しく踊る。その所作が優しければ優しいほどに切なくて狂おしさが募る。

曲が終わると、ここで再びMC。カズキの「前日何してた?」というお題から、四者四様の1日を振り返る。NOPPOさんの「はなまるうどんのコロッケ甘いんだよー」が、おそらく彼の発言において冒頭の「準備はできてるか!?」に次ぐ絶叫。武道館の中心ではなまるうどんのコロッケの甘さを叫ぶ。あれ?せが家パート続いてた?さっきまでニンフだの狂おしいなど思ってた私の感情返せ!笑

そんな彼らのギャップが良いんだと再確認して、後半戦スタート!

(下)に続く。

コメント

タイトルとURLをコピーしました