レビュー「エゴン・シーレ」展@東京都美術館

美術

エゴン・シーレとは?

エゴン・シーレ(1890~1918)
1890年オーストリア・トゥルン生まれ。1906年、16歳の時に最年少の特別扱いでウィーン美術アカデミーに入学。翌年クリムトと出会い、その才能を認められる。その後仲間と「新芸術集団」を結成し、アカデミーを中退。独自の画風を求めて意欲的に制作を進める。24~5歳の時にエーディト・ハームスと結婚。1914年の第一次世界大戦には召集されるも前線に送られることは免れ、創作活動も認められた。その後も国際的に高い評価を得るも、1918年に当時流行したスペイン風邪に夫婦で罹り、妻エーディトが亡くなった3日後の10月31日、シーレも28歳の若さで亡くなる。

ウィーン世紀末美術を代表する画家として、日本ではグズタフ・クリムトに続いてエゴン・シーレと、2トップの知名度と人気という感じではないでしょうか。

クリムトが代表作の《接吻》をはじめとして、黄金に輝く装飾的な画面、「愛」をテーマにした作品が特徴である一方で、エゴン・シーレは、病的な表情を浮かべる自画像やヌード、代表作《死と乙女》が象徴するように「性」や「死」への関心を痛々しいまでにむき出しにして表す作品が特徴的です。

そんなエゴン・シーレの作品を多くコレクションしているレオポルド美術館の作品を中心に、エゴン・シーレをはじめ、ウィーン世紀末美術の豊かな芸術世界を堪能する展覧会が東京都美術館で開催されています。

展覧会の見どころ

シーレの”線”のうまさに震える!!

今回の展覧会で一番の感想は「シーレの”線”が上手い」ということ。「自我」「死」や「性」といったセンシティブ(セクシャル)な画題に注目されがちですが、今回の展覧会ではシーレという画家の「描写力」を改めて実感することができる内容でした。

描写力と一言でいう中でも、特に「線」の魅力に気づかされました。

ドローイングでは、短い線を何重にも重ねるような描き方ではなく、一本の線でスパッと女性の体の肉感、シーツの質感やシワなどを描きだしています。その潔く引かれた線は見ていて心地いい。

また、展覧会のほぼ冒頭に展示されている母親の横顔を描いた作品。これもうまい!!!いわゆる「シーレらしい」タッチではないけれども、10代で女性の湛える悲哀を描ききる観察力よ!!

シーレの風景画を堪能できる!!

シーレと言えば、展覧会のビジュアルにもなっている自画像や、様々な女性像など人物画のイメージではないでしょうか。少なくとも私はそうだった。

ですが本展では、油彩・ドローイングなど様々なシーレの風景画も展示されており、シーレのもう一つの魅力を堪能することができます(この風景画の章のみ撮影OK)。

背景の白い部分を絵の具を盛って、木の幹や枝は塗り残したり、引っかいたりして表しています。図と地を逆転させて描くところも、画家としての技術の高さが垣間見えます。

よもつ
よもつ

この開けた窓を描いているのが、個人的にちょっとツボでした。シーレ可愛いとこあるじゃないか!!

そして、ドローイングでは、家や丘の風景を単純化しシンプルな線で描いており、まるで一筆書きのような印象。この「削ぎ落し方」が上手い!!

シーレだけじゃない!ウィーン世紀末美術の画家たちも見どころ満載

本展では、メインのシーレだけでなく、クリムトをはじめとするウィーン世紀末美術をけん引した画家たちの作品も集います。こういう構成の場合「シーレの作品が少なかった」というネガティブ意見も出てきます。

確かに今回の展覧会は、「シーレ作品の世界観にどっぷりと浸かる」という感じの展覧会ではありません。しかし、その分ほかの画家の魅力も十分楽しめるように魅力的な作品が集まっています。

私が本展で新たに注目したのは次の画家。

カール・モル

展覧会では彼の木版版画の作品が3点展示されていましたが、この版画作品がとても良かった。特に《ハイリゲンシュタットの聖ミヒャエル教会》という作品では、教会の周囲に生える木々の表現が、遠近感を出すように黒色の濃淡を変え、教会の屋根の色などが透けているので、どこか幻想的な雰囲気になっています。

コロマン・モーザー

画家の肖像写真も展示されており、その写真のポーズが煙草を手に持ち横を向いているという、なんとも「自我!!!俺を見ろ!!」という感じなのに、描いている作品が実に叙情豊か(失礼!)。

《キンセンカ》では、画面いっぱいに野に咲くキンセンカの花を描いており、小さきものを慈しむ眼差しが感じられます。また、《山脈》は水墨画のような静謐さを湛え、《雲の習作》は吉田博の新版画のような印象を受けました。

アルビン・エッガー=リンツ

《昼食(スープ、ヴァージョンⅡ)》と題された作品が今回展示されていたのですが、キャプションでは、同じシリーズの作品を25点制作しているといいます。スープを題材に25点、どんな風に描いているのか、他の作品が気になって仕方なかった。

グッズが大充実!!

今回の展覧会グッズですが、ポストカードが大充実です。展覧会のポストカードって「気になった作品がポストカードになってない」ということが往々にしてありますが、「そんなこと言わせえ」と言わんばかりに、主だった作品はほぼポストカードになっていました。

買いだしたらキリがない&図録を買った方が早いのではと思う位です(笑)。

グッズ売り場であれこれ検討する時間も含めて予定を立てた方が良いでしょう!!

展覧会概要

「エゴン・シーレ展」

会期:2023年1月26日 (木) ~ 4月9日 (日)
会場:東京都美術館
開館時間:9:30~17:30、金曜日は20:00まで
休館日:月曜日
料金:一般2,200円、大学生・専門学校生1,300円、65歳以上1,500
   ※平日限定ペア割3,600(一人当たり1,800
展覧会HP:https://www.egonschiele2023.jp/index.html

よもつ
よもつ

私は平日のペア割を利用して、金曜の夜間開館の時間に行きました!ペア割だと一般より400円もお得なので平日に行くことができる人はお勧めです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました