銀座の小柳ギャラリーで開催中の展覧会「耽奇展覧」。twitterでユアサエボシさんの告知投稿を見つけて、「もうタイトルからして面白そう!」と思っていた展覧会。
日曜日が開いていないため、なかなか都合が合わなかったのですが、たまたま平日に休みを取ることができたので行ってきました!!
新しい?古い?珍奇な物が集まる空間
中村裕太が古書店で『耽奇漫録』という書籍を手に入れたことを発端にした展覧会。中村裕太とユアサエボシの二人が、”奇なるもの”とは何かを探求し、それぞれのアプローチで制作した作品を取り合わせた展覧会です。
江戸時代、文人たちが珍しい品々を集めて披露し合う会を催していましたが、そうしたサロン文化、蒐集熱、珍奇なものへの偏愛…といったディープさ、掘り出し物からガラクタ同然の物が一緒くたにある”玉石混交”感、どことなく漂ういかがわしさ、アマチュア(オタク)感…そうした妖しい骨董屋の、ちょっとかび臭い感じが現代のギャラリーの中に充満していました。
ユアサエボシーー仄暗い欲望とノスタルジーが交錯する
”ユアサエボシ”は、大正時代の画家…という設定で作品を発表しているアーティスト。まずこのスタンス自体が既に「奇」なるものですが、そのユアサの作品は、幼少期の玩具や、古代の壺(に特定不可能な植物が活けてある)などの静物画が並んでいます。
幼少期の頃の宝物であった玩具などの作品からは、時間という波に取り残された物のノスタルジーと、自分を置き去りにして成長(変わっていく)人間に対して、「過去」からじっとこちらを見つめてくるような脅迫感も感じさせます。
この《大砲のある生物》では、大砲の筒を這うカタツムリ、車輪の下の女性物の柄の布が暗示するように、大砲=男性器になぞらえられたエロティックな作品。
中村裕太ーー”奇”の品種改良!?”新しい奇”をつくる
中村裕太の作品は、複数の書物の中に掲載されている一節、あるいは挿画から着想を得て、それらのモティーフ、イメージ(あるいは物語)を組み合わせて、新しい”奇”なる器を作ります。
展示では実際にインスタレーションを得た書籍も展示されており、それらの本は手に取って中を見ることもできるので、作家がどういう文章やイメージをもとにしていたのかを辿ることができます。
これは一種の品種改良では!
そして、品種改良と言えば、江戸時代の朝顔ブームや椿ブームなど、愛好家たちが朝顔や椿への熱が乗じ品種改良が盛んに行われていました。そうした「より見たことない物(品種)への欲望」さえも、作家はなぞらえているのかもしれません。
現代の作品であるはずなのに、どこかカビ臭い匂いが漂うのは、これらの作品が生まれる根源にある「耽奇」が江戸時代に通じているからでしょう。
Viewing Roomの作品もお見逃しなく!
メインの展示ルームのほかに、商談スペースである「Viewing Room」にも二人の作品が展示されているので、こちらもお見逃しなく。「Viewing Room」は展示リストに地図が載っていませんが、エレベーターを出てすぐ左折した先にあります。ただし開いていない場合もあるので、その場合はスタッフにお声かけしたら開けてもらえます。
私が行った時も開いておらず(というより部屋が分からず)、スタッフさんに案内してもらいました。
ここでは、この展覧会の発端ともいえる『耽奇漫録』と、それに着想を得た《かたつむりの土瓶》(中村裕太)と《夫人像》(ユアサエボシ)が展示されています。
古美術ファンも、現代アートファンもどちらにとっても気になる展覧会ではないでしょうか。”古美術”ではないけど”古美術じゃない”とも言い切れない…自分は今どの時代のどこにいるのかよくわからなくなる、そんな奇妙な心地になる展示でした!
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