s**t kingz DANCE LIVE 2025 in日本武道館「LANDING」レビュー(2)

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s**t kingz DANCE LIVE 2025 in日本武道館「LANDING」レビューの第2弾。

第1弾は下記の記事から読むことができます。

「Clap Dance(w/ Dr. Taihei)」

Oguriのソロが終わり暗転。再び明かりがつくとOguri以外の3人が、先ほどOguriが去ったセリを見ながら拍手をする。そこからひょっこり首を出すOguri。シリアスなシーンからのシュールな展開で笑いを誘う。Oguriもセリから戻り拍手に加わり、何となくその場が収まりかける。一旦止んだ拍手のあと、NOPPOがおもむろに再び拍手を始める。何事かと思うと、shoji、Oguriと次々に拍手の音が4人の間を飛び交う。

「これは!!!!!!!!!!!」

ファンだったらここでピンとくる。今年「MUSIC STATION」で披露した「Clap Dance」。拍手や足音、口で、4人自ら音とリズムを作りながら踊る。一糸乱れぬ音とダンス。武道館という広い空間での静寂の中で、4人から生まれる音だけが響く。息する音すら憚(はばか)られるほどだ。後半は、ドラムのタイヘイとの掛け合い。kazukiやNOPPOがスティックを受け取り、シンバルを叩くなど、ドラムを囲んで4人が音で遊ぶ姿が眩しい。

「ここからは皆さんも一緒に踊りましょう!」というコールから、『えがお! feat. PES』に入る。「”え”が”お”になる」と「笑顔」をかけた言葉遊びのような歌詞。ひたすら笑顔とhappyなムードで会場を一つにまとめる。(会場両サイドに設置された特設ステージにもメンバーがった智、スタンド席のお客さんとの一体感も忘れない。)

メドレー『On My Side』『Turn Up The Love』『FFP』『衝動DO』

続く『On My Side feat. issei』は、これまた「男の色気」を全面に感じさせるセクシーな一曲。ダンスの引き出しが多くて忘れかけてた頃にやって来る、「あっ、この人たち、めちゃくちゃかっこいい人たちだったわ」となるターン。前回の武道館でも披露した楽曲だが、前回はハットを使ったパフォーマンスで、そうした小道具使いの細やかなテクニックで見せる”色気”だったが、今回は王道に、というか直球で自分たちの「身体」そのもので色気をみせる。

そこからの『Turn Up The Love feat. RIEHATA』。昨年のシッキンフェスでRIEHATA と披露したパフォーマンス。「愛のボリュームを上げていこうぜ」というポジティブなメッセージを、RIEHATAの力強くグルーヴィな歌声で聞かせる。この時間だけは、武道館という大空間が地下の極狭ライブハウスの趣になる。

そしてなだれ込むように『FFP feat. C&K』が始まる。前回の武道館ではこの曲から始まった。シッキンの名刺代わりの1曲で、前回は「ダンサー史上初の武道館公演」ということで、「初めまして」の意味で冒頭に踊った楽曲が、今回はメドレーの1つとなった。もう武道館という場所で「ご挨拶」をする必要はないということだ。

そしてメドレー形式にしたことで、「♪踊る革命家~」のフレーズがより強調される。シッキンのダンスパフォーマンスグループとしてのスタンス、自分たちの使命である「開拓者(=ファーストペンギン)」であり続けるという意志は変わらない。(個人的には、前半の「もっと自由に踊れたら~」という歌詞や「まだ全てを手にしてないから~」という部分も好きなので、またいつかフルで踊ってほしい)

そしてシッキンライブの定番となった『衝動DO feat. 在日ファンク』。ダンスが上手い下手とか関係ない、衝動的に動いて楽しんじゃえばそれがダンスだ!!!という「誰も置いていかない」シッキンらしい一曲。途中に差しはさまれる「衝動ズビズバゲーム」も恒例のコーナー。Oguriが出す「ズビズバ」的なスキャットに合わせて衝動的に踊るというものだ。まずはシッキンメンバーが見本を見せ、次にシッキンのライブを支える裏方スタッフさんを毎回ランダムで指名する。シッキンのスタッフ愛を感じさせる一幕。スタッフが登場する時間にタイムラグがあるので、本当に事前の打診なくいきなり指名しているのだろう。今回も2日目にスタイリストの森田氏が指名されたが登場までに時間がかかり、kazukiさんが音頭をとって「森ティー」コールが起こるほどだった。

裏方には裏方の美学があり、別にステージ上でスポットライトを浴びたい訳ではないだろう。でもだ、でもやっぱり自分の進んでいる道にはこれだけの光景が広がっていて、その一部を自分が担っていて、その力を、ステージにいる演者が誰よりも理解してくれていることは、これほど報われることはないだろう。

大転換

そして次のパートに進むために「大転換」。シッキンがステージを去り、スタッフと、何とバンドメンバーが協力して次の舞台セットを組み始める。バンドメンバーはほとんど周辺でふざけ倒していたようだが(2日目はハプニングでキーボードの井上惇志がドラムのタイヘイにキスするという場面も)。こうした「転換も見せる」手法は、彼らが〇年にした『NAMAHOSHOW ON&OFF』や舞台『HALLO ROOOOMIES!!!!』を思い出させる。1つ1つの積み重ねがシットキングスの血となり、骨となり、肉となり、今この武道館のステージがあるのだということを実感させる。

そしてセッティングが終わると、バンドメンバー&スタッフ一同で記念のポージング。こういうところもバンドメンバー愛、スタッフ愛を感じるし、スタッフやバンドメンバーからのシッキン愛も感じる。シッキンバンドには、音楽的なスキルだけじゃなく、アクティングも求められているのか…。ぜひとも円盤化の折には、バンドメンバーのこの部分のリハ風景が見たいぞ。

大転換中にテーブルと4脚の椅子が出た時点で、もうファンの期待値はMAXに上がっている。「あの家族が来るぞ…」

「せが家」

シッキンが武道館に帰ってくるということは、自動的に「せが家」も来るということだ。これはあくまで個人の感想に過ぎないが、おそらくシッキン人気の「せが家」の人気はイコールといっても過言ではないだろう。

お父さん(Oguri)、お母さん(shoji)、たかし君(NOPPO)、犬のカズー(kazuki)の一家が無人島にやって来たという設定&スポンサーのミツカンの鍋商品を紹介する商魂たくましい、したたかさで、無人島でマンモス鍋を食べるという強引なシチュエーションが展開する。

そこへお母さんが「イケメンをハンティングした」というゲストが登場する。1日目はSKY-HI。ちょうどBMSGオーディションで誕生したSTARGROWの『MOONCHEICER』の振り付けをNOPPOが担当したことから、たかし君がオーディションの研修生になりたいということで、せが家4人で『MOONCHEICER』 を踊るというアツすぎるスペシャルパフォーマンスが披露される。なんという僥倖。シッキンが踊る『MOONCHEICER』 。カズーの魔法(ハロウィンということでカズーが魔法使いになったという設定)のせいで椅子に座っていたが、 スタンディングで爆上がりするばめんだろう!?あぁなんで衣装が「せが家」…。いやこれはこれでシュールで面白いよ!!!!笑いと混乱と歓喜の感情がごった煮となる。

そしてパフォーマンス後は、本家同様、SKY-HI が1人1人へ講評。BMSGオーディションのパロディをSKY-HI本人に付き合わせることができるのはシッキンくらいなものだろう。そして「お父さんはずっとアティチュードがお父さん」と真面目にお父さんを評するSKY-HIも、それをまっすぐな目で受け止めるお父さん、もとい小栗基裕も、いい意味でどうかしている。涙が出るほど笑った。私が今回の武道館公演で初めて流したきれいな涙は「せが家」でした。

そしてここでさらなるスペシャルゲスト、STARGROWが登場し、サビをせが家(シッキン)とコラボパフォーマンスする。これから先、STARGROWとシッキンがコラボする可能性は0ではないだろうが、少なくとも「せが家」とコラボする機会はこの日だけだと思った方がいい。そうじゃなきゃ逆にSKY-HIのプロデュース力を心配するだろう(笑)。そのくらいスペシャルな瞬間が誕生した。

2日目は、ゲストにDa-iCE の工藤大輝が登場。カズーがDa-iCEに入りたいということで、shojiが振り付けを担当した『スターマイン』をせが家の4人で踊る。シッキンの4人がちゃんと「せが家」の各キャラクターの個性のままで踊るから、ちゃんと踊れば踊るほど面白い。ダンサーの演技力というか「憑依力」恐るべしだ。おもわず工藤大輝も「この中であえて一人選ぶならワンチャン…」と言いかけ、カズーが反応し「ワンチャン、ワンチャン(カズー)かな」という不覚のダジャレも出てしまう。

せが家コーナーの締め括りは『Familia』。せが家を題材に家族愛を歌ったOguri制作の楽曲(ちょっとこの曲の存在を忘れてしまってごめんなさい)。歌詞はyoutubeで発表した「浅はかなドラマ」通称「浅ドラ」でせが家の日常を描いた作品が元になっている。

当時からのファンとしては「そんなこともあったなぁ」と本当に家族の昔の思い出を振り返るようなノスタルジーさえ感じる(そして、たかしの服の丈はやっぱりどんどん縮んでいっているか成長期!?)。

この当時はちょうどコロナ禍でどんどんと”生”のエンターテイメントができなくなっていった時期だった。そんな中でも、シッキンはあらゆる形でエンターテイメントを届けようとしていた。(もちろん今もだが。)そうした作品それ自体にも勇気づけられたし、どんな状況でも自分たちのクリエイティビティでポジティブな方向に変えていく姿勢におおいに勇気づけられた。シッキンにハマった理由や好きな所を挙げるとキリがないが、それら一切を突き詰めて一言で言うとしたら、ここになる。

shojiソロ(『Boom Boom Boom Boom Boom Boom Boom Boom』)

「せが家」でこんなに文字数を割く予定ではなかったのに、思わず過去を振り返り長くなってしまった。抱腹絶倒、嵐のようなバカ騒ぎが過ぎ去った後は、shojiが現れ、再び「爆踊り」タイムに突入。いつも誰よりもパワフルにエネルギッシュに踊るshoji。

「s**p」でのジャケットスタイル(だったよね?)から変わり、武道館ではストリート系のカジュアルなスタイルになり、アメリカ(ニューヨーク)の若者のような雰囲気に。shojiのパッションは相変わらずだが、今回はそこに小気味よく織り交ぜられる「銃を撃つポーズ」。これがニクいタイミングで入ってきて、その緩急にやられる。

kazukiソロ 『SURF feat. Ace Hashimoto 』

 続いてkazukiソロ 『SURF feat. Ace Hashimoto』。タイトルの「SURF(=波に乗る)」の通り、バックのスクリーンには様々な水の映像(雫が垂れるミクロ的なシーンから壮大な水流など)が流れる中、kazukiがしっとりと踊り出す。「s**p」 ではキャップを被り、黒のトップスとパンツ(アクセントにシルバーのネックレス)というシンプルなスタイルで、極力「身体」そのものシルエットが際立たせようとしているように思ったが、今回はキャップは外している。帽子であえて押さえず、よりシンプルに「kazuki」の姿で武道館の観客に対峙する。その芯の強さのようなものを感じた。

水をイメージした壮大な映像の中で、kazukiのシルエットがくっきりと浮かび上がる。気だるさと甘美さを感じさせるメロウな音楽が、かえってこの人のダンスのクリアさ、余計なクセやニュアンスを付けずに最短距離で見る人の心に届く確かさを際立たせ、その融合が胸を打つ。

続く。

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