SOMPO美術館「アルベール・マルケ」展

美術

会館50周年を迎えるSOMPO美術館。近年特に私好みの展覧会が多い。9月より始まっている「アルベール・マルケ」展も、チラシを見た瞬間「これは行きたい!」と直感が働いた。

と言いながら、会期も残り1ヶ月というタイミングになってしまったのだが、ようやく訪問。

アルベール・マルケとは

SOMPO美術館

本展は、日本で35年ぶりとなる画家の回顧展で、約90点の作品が集まる。・

 フランス南西部の港湾都市ボルドーで生まれたマルケは、パリで盟友アンリ・マティスと出会い、仲間たちとともに純粋色と自由な筆触を用いた「フォーヴィスム(野獣派)」と呼ばれる作風を展開していきます。しかし、終始、観察に基づいて描く態度を崩すことはなく、「マルケのグリ(灰色)」と呼ばれた独特な灰色の使い方をはじめ、ニュアンスに富んだ中間色のトーンの対比によって、風景画を描くようになります。

展覧会HPより引用

マティスと言えば、鮮やかな色彩の室内画や、単純かつユニークな形を組み合わせた切り絵などの作品で有名だ。いずれにせよ鮮烈な色彩が目を引く画家と親交が深かったマルケ。展覧会は「フォーヴィスム」と呼ばれる芸術様式に則った作品から始まる。

《ラフ、通称フォーヴの裸婦》1898年 ボルドー美術館

裸婦のモデルはしっかりとした量感を感じさせる描写の一方、背景となるデッサンをしている人物、窓の向こうの背景は、ぼんやりとしか描かれていない。特に注目したいのは壁紙。筆触分割の手法で、様々な色をそのままキャンヴァスに置いていく。

《ノートルダム大聖堂、陽光》1904年 ポー美術館、国立造形芸術センターより寄託

マルケが描くパリの街並みは、往々にしてこの構図が多い。前景となる道路と川辺の境界は、画面に対して、右上もしくは左上に横切る直線で区切られる。モティーフのディティールは省略され、単純な筆さばき(色面)で、人々、街路樹などを表す。

《ル。アーヴル、船渠》1906年 ル・アーブル、アンドレ・マルロー近代美術館

撮影OKの作品が限られていたため、写真はないが、「マルケのグリ(灰色)」という呼称に納得なのは、特にパリの雪景色、もしくはミスト状の大気で街が覆われているような光景を描いた作品は、面目躍如たる表現だ。画面全体は灰色を基調にしており、その中で微妙にピンクがかっていたり、青味がかっていたりして、絶妙なトーンでまとめられた画面からは、当時の気温や湿気まで感じられるようだ。

同じ場所、同じ構図の作品を何枚も描いており、いずれも俯瞰する視点(自宅のマンションから見下ろす光景)で描いている。それらの作品が並んで展示されているので、まるで今でいうお天気カメラ(定点のライブ映像)を見るような面白さがある。雨の日、夕暮れ、雪の日…橋を渡る車の量の違い、街路樹の葉の茂り具合…など、「パリの一室に住んだら毎日こんな光景を見るんだろうな」と想像してしまう。

《マルセイユの馬》1916年 ボルドー美術館

マルケは「旅する画家」でもあった。イタリアのナポリ、アフリカのアルジェリア、ドイツなど各地の風景(その中でも特に水辺の景色)を描いている。

天気のいい日の街並みは陽射しの強さも感じられるほどに鮮やか。上の写真の作品では、澄んだ水の鮮やかさが目を引くが、画面下側にいる赤い服の少女にも注目。彼女の服の鮮烈な赤、画面中央の停泊する船の煙突の赤、その奥のぼんやりと見える船の船底を彩るくすんだ赤、彩度の異なる3つの赤色がリズミカルに配置されており、穏やかな風景の中にもピリッとしたアクセントになる部分を作っている。

《ナポリ、帆船》1909年 ボルドー美術館

日本美術の影響も指摘されているというマルケ。この作品も浮世絵の影響が指摘されており、遠くのぼんやりとしたシルエットで表されたヴェスヴィオ火山は、浮世絵の富士山からの着想ではないかとの指摘もあるそう。マティスからは「我らの北斎」と讃えられていたという。マルケの描写力と同時に、西洋においても画力(画風)の権威として「北斎」の名が当時から知られていたことに、日本美術ラバーとしては鼻が高い。

《ル・ピラ》1935年 ボルドー美術館

展示作品の中でも特に海の青のグラデーションが見事だった《ル・ピラ》。海の底の深さが変わっていく様子が見事に表されている。よくよく見れば波の線など実に単純なのに、波間の様子が伝わってくる。

展覧会の最後は、素描や挿絵作品の紹介で締め括られる。インクや墨などで描かれたラフなスケッチには、マルケの確かな技量と、油絵とは異なる軽妙洒脱な筆使いが目に心地よい。もっとマルケの素描を見たくなった。

お馴染み、ゴッホの《ひまわり》

3フロアある展示室の最後を飾るのは、常設展示のゴッホの《ひまわり》。SOMPO美術館を象徴する作品であり、日本にある「西洋美術の傑作」の代表格でもあるだろう。この作品が日本にある、ということがどれほど誇らしいことか。

フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》SPMPO美術館

この作品は、どの展示の時も毎回撮影OK。作品が変わる訳ではないのだから、そう何枚も撮影する必要はないのだが、やっぱり行く度に写真を撮ってしまう性(さが)。何度も見れば見飽きるのでは、と思いきやそんなことはない。見るたびに度に発見がある。

今回は、中央のこちらに正面を向けるヒマワリの中心に赤い絵具がつけられていることに気づいた。気づいてしまえば、なぜ今までこんな強烈な赤色があることに気付かなかったのが信じられない。今までは全体の黄色のエネルギーに気圧されていたのかもしれない。何度も通ううちに、ようやくこの黄色にも目が慣れてきたからこそ赤色に気づくことができたのだろう。

単純なようでいて奥が深いぜ、《ひまわり》。

アルベール・マルケ展

「開館50周年記念アルベール・マルケ展」
会期:2026.09.22(火)- 12.13(日)
会場:SOMPO美術館
開館時間:10:00 – 18:00(金曜日は-20:00)※入場は閉館30分前まで
休館日:月曜日、9月24日、10月13日、11月24日(※ただし10月12日、11月23日は開館)
料金:【当日券】一般2,000円 25歳以下1,200円 、小中高校生 無料、障がい者手帳をお持ちの方 無料
展覧会HP:https://www.sompo-museum.org/

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