プロローグ
声帯を横浜に置いてきた。そんな2日間だった。
シッキンが主催する初のフェス「s**t kingz Fes 2024 ももたろう」の多幸感に浸りながら家路につく。昔話の『桃太郎』なら、鬼ヶ島から帰った桃太郎は、沢山のお宝の山を持って帰ってめでたしめでたし…だったような気がするが、今日出会った桃太郎の旅はなんか違ったような気がする。
だけど腑抜けた私の体は竜宮城から帰った三浦島太郎…あ、違う、浦島太郎気分だ。
…あれ?そもそも鬼ヶ島で何してたんだっけ?タオルぶん回してた記憶しかない。
フェス開催の発表、そのタイトルは…
シッキンフェスの開催は昨年の武道館公演で発表された。彼らは大きなイベントで毎回次の約束を発表してくれる。
テレビなどでもお決まりとなった「これまで振付してきた楽曲は400曲以上」(今は450曲以上に更新)は伊達じゃなく、音楽特番があればシッキンが振付してないアーティストがいない位だ。だから常々ファンの間では「シッキンが振付した楽曲(アーティスト)縛りでフェスできるじゃん!」と言っていた。しかしそれは半分願望、半分夢物語の「それだけシッキンって凄いんだよ」という比喩表現だった。
しかし、彼らは比喩表現で終わらせなかった。本当に開催してしまった。
音楽(エンタメ)業界で、ダンスは音楽の一要素、言ってしまえば「音楽>ダンス」という主従関係だったのを、シッキンは武道館でダンサーがフロントマンになれることを証明し、今度はフェスでオーガナイザーになれることを世に示した。
「ダンサーの、ダンサーによる、ダンサーのためのフェス」ではなく、
「ダンサーによる一般の人のためのフェス」なのだ。
それだけで期待が張り裂けそうな思いを、武道館以降、心のうちに膨らませて2024年になった。いよいよ詳細が知りたいとなった3月、とうとうそのタイトルが発表された。
「ももたろう」
…えっ??…………えっ?
ももたろうって私が知ってるあの桃太郎??なんで??HPやチラシの淡いピンクのバックに白字で表された平仮名5文字に困惑する。
分からない。もちろん桃太郎の話は知っている。しかし、なぜにフェスで桃太郎??
武道館公演のブルーレイ発売の取材でダンスの著作権の問題や「音楽の日」で事務所の垣根を超えたことの意義などを熱く語っている姿を目の当たりにして、この人たちの見てる視野の広さとその深さに感嘆したが、そうやってシッキンの凄さの認識を改めた途端、既に本人たちは全く別のところにいるのだ。
言葉でその美しさの本質を捕まえようとするライター、言葉なんかで捕らえさせるものかとする表現者、永遠のいたちごっこはいつも表現者たちに軍配が上がってしまう。それが悔しいのだが、それこそライターの幸せというものなのだろう。
かくして彼らはまた思いがけない方向に舵を切っていた。
オープニング
武道館公演での発表から約10ヶ月。2024年7月27日。とうとうこの日がやって来た。
27日、28日の2日間、横浜BUNTAIで開催される「s**t kingz Fes 2024 ももたろう」。
会場の幟やグッズのきびだんごで「ももたろう」気分も高まってくる。野球観戦みたいに、客席できびだんごを売り歩いているのが「BUNTAI」という会場らしくて微笑ましい。
そしていよいよ開演。アニメーションでお馴染みの桃太郎のストーリーが流れる。本当に桃太郎のストーリーで進むんだということを各々のファンが受け入れる(笑)。
そして大きな桃が4つパッカーンと割れて、シッキン、いや桃太郎が登場する!!
フェスタイトルが発表されてからファンの間で「桃から登場するのか」「桃から登場する時、桃は縦割れなのかサザエさんみたいに横割れなのか」と話題にしていたが、大方の予想通り縦割れだった。さすがにサザエさんのようなゴキゲンな登場ではなかった(笑)
そしてご挨拶がてら、最初にぶちかますのが「Get on the floor feat. MaL, ACHARU & DREAD MC」!!武道館公演では一番ハードな曲として披露したパフォーマンスをのっけからやる4人。ももたろうダンサーズとの共演で「えがお」などの楽曲を途中で加える特別アレンジで、一気に会場の熱気を沸点にまで上げる。
そう、オープニングで既に沸点に到達した。フーフー騒ぎながら、これから約4時間あるんだぞ?声もつのか?その未知なる旅路に慄(おのの)く。
1組目:MAZZEL/ Da-iCE
フェス2日間で様々なアーティストが出演したが、全体の構成(展開)は同じで、アーティストの選定は「ダンスボーカルグループ(アイドル)枠」「バンド枠」という括りを意識して各日のアーティストが選ばれているようだった。
最初に鬼ヶ島に行くお供となるのは「ダンスボーカルグループ(アイドル)枠」として、1日目がMAZZEL、2日目がDa-iCEだった。前者はBMSGのオーディションでシッキンのメンバーが課題曲の振付をしたり、MAZZEL誕生のプロジェクト「MISSON×MISSON」のテーマ曲であり彼らのプレでビュー曲「MISSON」の振付をshojiさんが担当した縁がある。後者は「シッキンの皆さんに振付してもらった曲は3桁いきそう」と豪語するほど、多くの楽曲の振付をシッキンが担当している深い仲だ。
私はこの2組について、ダンスはもちろんだが、その歌に圧倒された。テレビで曲は知ってはいても、生の歌声は別物だ。Da-iCEの「TOKI」では涙が出てきた。
「オープニングで温めておいたから、後は若手がトップバッターとして思いっきりパフォーマンスしろよ!」っていうシッキン兄さん達の思いに応えるように、自分達のライブ会場のようにそれぞれの持ち味を発揮して、会場を盛り上げる。
MAZZELのコラボ曲はオーディションのテーマ曲でshojiさん振付の「MISSON」。この曲も無性にアツくなる。それをシッキンとコラボで見られるなんて、体中の血がたぎらないわけがない。
Da-iCEはシッキン4人のそれぞれの振り付けを披露するエモいセットリストで、最後は薄々みんな期待してた「スターマイン」。シッキンが乱入する茶番も繰り広げて2組の仲良し加減が伝わる。パフォーマンスの熱気は、「ライブ」というより「祭」、「盛り上がる」というより「大騒ぎ」!!フィナーレのような盛り上がりで、観客も1組目なのに既にヤケクソ状態。
2組目:RIEHATA / QUICK STYLE
トップバッターでヘトヘトなまま2組目へ。しかし、これがまさかの「世界水準のダンサー」枠。1日目がRIEHATA、2日目がQUICK STYLE 。
正直に言う。「シッキン鬼か??」
トップバッターで散々騒がせて、休む間もなく世界水準のダンサーのパートにするって…。この桃太郎たち、笑顔でまぁまぁハードなことさせてくんじゃん?
2組ともオシャレでカッコいいんだけど、全く違うテイスト。RIEHATAがニューヨークの最先端でバチバチに尖って「出る杭は出過ぎれば打たれない」を体現するようなパフォーマンスで圧倒された。かと思いきやMCになると可愛くって、何なのこの人!!そして懐かしい楽曲をアレンジしたメドレーで、「エモい楽曲×最先端のダンス」パフォーマンスで魅せる。
QUICK STYLEは空気感がシッキンの空気感と近いと感じた。多分キレッキレに踊らせたらめちゃくちゃ踊れるんだけど、その本気を隠してゆるく優しく踊る感じ。そして藤井風の「きらり」でのシッキンとのコラボ。この極上感。屋内なのに爽やかな風が会場を吹き抜けた。
たとえるならRIEHATAがタンブラー片手にウォール街を闊歩するキャリアウーマンなら、QUICK STYLEはTシャツ短パンで田舎でノートパソコン1つで仕事するノマドワーカー(ビジネスマンでたとえる必要があるのか分からないが)。大丈夫?伝わる??
カズキのタネ+せが家+ガチャピン・ムック
極上の時間で脳が呆けた後、kazuki桃太郎が1人迷子に。そんなカズ太郎(←便宜上勝手に命名)の前に現れたのは、犬猿雉を一手に引き受けた「いさじ」。そんな馬鹿げたキャラクターを1点の曇りなくやりきるのは、我らが「カズキのタネ」の相方、show -hey。お馴染みの「ナイトゥミ」を、ももたろうダンサーズとの殺陣シーンを織り交ぜた特別バージョンで披露。
そんな一幕もつかの間、客席後方に現れたのは、シッキンファンの大好物「せが家」の面々。神出鬼没の一家に会場内のボルテージも1段階上がる。せが家が来ただけでも赤飯モノなのに、さらにシークレットゲストとしてガチャピンとムックが登場。誰が予想した?フェスに大人気子供向け番組の大御所キャラが来ると思う??何でもあり過ぎないか??
後方ステージで、せが家、いさじ(show -hey)、ガチャピン・ムックというキャラ大渋滞の状態で『ポンキッキーズ』のテーマ曲で55周年の記念番組でシッキンが振付をした「歩いて帰ろう」を披露。ちびっ子も、かつてちびっ子だった人も全員が童心に帰って一緒に踊る。
個人的にはshow -heyさんがバッチバチに踊って色気ダダ洩れのパフォーマンスも見たかったのだけど、ガチャピン・ムックがいるせいか、ずっと可愛い路線で猫かぶってた(いや、かぶってたのは犬なんだけど)。
(中編に続く)
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