吉野山の旅①奥千本編

旅行

桜の名所で知られる奈良県・吉野。ずっと気になっていたが一度も行ったことがなく、「いつか、いつか」と思っていた。

「今年のやりたいこと」リストの1つにも入れていた「吉野の桜を見る」。そんな中で絶好の機会が訪れた。2026年4月、奈良国立博物館で「吉野・大峯展」が開幕した。吉野、そして和歌山県・熊野に続く大峯に伝わる蔵王権現信仰など、吉野・大峯の地に伝わる新港の姿を紹介する展覧会だ。

吉野に行くなら今でしょ!?

ちょうど展覧会の取材もすることが叶ったため、取材の翌日に吉野行きを決行することに決めた。今後「吉野に行こう」という人に向けて、私の弾丸吉野旅をレポします。

吉野行きの計画&注意事項

吉野山は、大きく4つのエリアに分けられる。近鉄・吉野駅に近い所から「下千本」「中千本」「上千本」「奥千本」。そこで最初の難題にぶつかる。

そもそも、どのエリアの桜を見るか

山の麓(標高約230mから350m)の「下千本」と、標高約600m〜750mの「奥千本」では、桜の開花シーズンが異なる。どのエリアの桜の開花に照準を当てるかで、行く日も決まってくる。

また日帰りなのか、一泊二日なのか、日帰りであってもどのくらい滞在できるのか、食事やお土産屋さんに立ち寄りたいのか、なるべく多くの寺社を見て回りたいのかでも理想のルートは変わる。自分の目的意識(絶対に行きたい場所)をはっきりともち、まずはそこを目指して歩く!というのが鉄則だろう。

今回の場合、展覧会の取材合わせということもあったので、日程は決め打ちで4月12日の一択だった。「開花がなるべく遅くあれ!」という私の願いもむなしく、例年以上に早い開花。奥千本も桜が残っているかどうか…。果たして、どうなる!?

そして、大事なことを1つ。

近鉄・吉野駅発着の特急に乗りたいなら予約しろ!!

バスツアーなどでなければ、吉野山の登山は基本的には最寄りの近鉄・吉野駅からのスタートとなるが、桜のシーズンは混むので、特急に乗りたければ事前の予約をしないと、当日だと売切れの可能性大

普段特急に乗らない(東横線など特急料金のかかからない特急のイメージがあった)から、うっかりしていた。朝、近鉄の改札で特急に乗るつもりで行くと「売切れ」。急行でも行くことはできるが、急行だと近鉄阿部野橋駅から約1.5~2時間かかる。

なるべく時短を優先するなら、行きも帰りも特急の時間を確認すべし!

当日のスケジュール

前日は大阪にある身内の家に泊まったので、大阪から吉野に向かう日帰りコース。結果としては下記のようなスケジュールになった。

8:20 天王寺駅
10時頃 近鉄・吉野駅着⇒バスで中千本公園まで上がる(500円)
10時15分頃~11時半 中千本~上千本まで徒歩
           吉野水分神社
12時~13時頃 奥千本散策
        金峯神社、西行庵、苔清水
      ⇒金峯神社前からバスで竹林院前まで移動(400円)
13~14時 下山しながら散策
      竹林院・桜本坊・吉水神社・勝手神社
14~14時半 金峯山寺蔵王堂 拝観

15時頃 吉野駅発
17時半頃 新大阪駅着
18時 新大阪駅発→東京へ!

いざ出発!

限られた時間の中で最大限に楽しむなら、吉野駅に着いたらまずは一気に奥千本に向かうのがベター。そこから下山するついでに各所を見て回るというのが一番効率がいい(そして体力も温存できる)ルートだろう。

事前に調べた際、「桜シーズンはバスが出ていない」という情報を目にしたので、理想のルートで回るのは難しいのかと思っていた。そのため吉野駅に着いた時は、下千本から上千本に向かって歩くコースを想定していたが、駅に着くと目の前で「吉野山中千本」行きのバスが間もなく出発するという。

近鉄・吉野駅周辺(お土産屋さんなどが並ぶ)
山に入るとトイレの場所が限られているので、登山前に駅に隣接してある公衆トイレで済ませておくと安心。

ひとまずそのバスに飛び乗り、一気に中千本までショートカット(所要時間は約15分程)。

中千本の駐車場に着き、登山道に出ると、今度は奥千本行きのバスの停留所を発見。しかし、なんと90分待ち。さすがに90分待つなら、徒歩で登っても所要時間はほとんど変わらないので歩くことに決めた。

朝10時頃ですでに90分待ちの列。弁当・飲み物なども販売
奥千本行きのバス亭近くで販売していたお弁当(1000円)

中千本~上千本(吉野水分神社)

中千本から上千本にある「吉野水分神社」までは徒歩で約45分。下界では桜はほとんど散ってしまった頃だったが、上千本あたりになると少しずつピンク色が増えていく。

中千本~上千本の登山ルートからの景色

中千本~上千本の登山ルートには、歌舞伎や文楽の『義経千本桜』に登場する「佐藤忠信」やら「横川覚範」にまつわる席がちらほらとあり、歌舞伎・文楽好きには聖地巡礼の旅。

実際に、山の上から、斜面に咲く桜を見ると、「これが歌舞伎の背景に描かれている吉野の山の桜の風景か~」と感慨深い。(その感慨は、奥千本で大幅に上書きされるのだが、この時はまだ知らない。)

 吉野水分神社(よしのみくまりじんじゃ)

吉野水分神社 鳥居

歩き続けること約45分。上千本エリアの見どころスポット「吉野水分(みくまり)神社」に到着。吉野水分神社は、子守宮(こもりのみや)ともいい、子授け・安産・子どもの守護神として篤く信仰されている。

鳥居をくぐり中に入ると、春日大社のような回廊式の社殿。中庭に桜の大木があり神聖な雰囲気が立ち込める。午前中に訪れたこともあってか、朝の真っ白な陽射しが一層神々しさを引き立てる。

吉野水分神社の境内
社殿の中には、豊臣秀頼が慶長9(1604)年に寄進したという輿も展示。
かなりの傷み具合なのが残念。修繕などできないものだろうか。

中千本~上千本の間で2ヶ所ほど展望台の案内があったのだが、「まずはなる早で奥千本を目指さなくては」と思って、後回しにした(帰路で立ち寄ろうと思った)が、帰路は奥千本の入口から中千本まで戻るケーブルバスに乗ったので、結局展望台には立ち寄れず。

行きたい場所があったら、その時に行く。吉野に「後で」はない。

 【世界遺産】吉野水分神社

豊臣秀吉が子授け祈願をし、その子秀頼を授かったことから、現在の社殿はその申し子である秀頼が慶長9年(1604年)に再建した。
桃山様式建築の三殿一棟の本殿・幣殿・拝殿・楼門・回廊は国の重要文化財に指定。

拝観料:無料

奥千本(義経隠れ塔・金峯神社・西行庵)

奥千本の入口・金峯神社の「修行門」

吉野水分神社からさらに30分歩き、ようやく奥千本の入り口に到着。

金峯神社の入り口、修行門の前に立つ。ここで近くにいた警備員のおじさんに話しかけられる。登るのかと聞かれたので「もちろん」と答えると、「僕は絶対に行かないけどね」とまさかの返事。理由を聞くと「これを登るんだぞ?」と。

確かに見るからに勾配が高い。中千本~上千本の道中ですでにハァハァ言いながら登ってきたことを思うと、確かに怖い。それでも「それをしに来たのだから」と、警備員のおじさんに別れを告げ、身を奮い立たせて鳥居をくぐる。

義経隠れ塔

金峯神社に続く参道は舗装されているのだが勾配が急なのでキツイ。それでも参道の脇に立つ桜が出迎えてくれるようで頑張れる!

金峯神社に向かう参道脇の桜。来訪者を見守ってくれるよう。

そして神社の本殿の前に到着。本殿を参る前に、すぐ近くにある「義経隠れ塔」に。『義経千本桜』では、源義経の都落ち伝説が軸になっている。「川連法眼館の場」は、吉野の地に落ち伸びた義経一行が逗留しているという設定なのだが、その物語の設定も、こうした遺構から着想を得ているのだろうなと感じ入る。(違っていたら申し訳ございません)

義経隠れ塔

金峯神社

金峯神社 鳥居

【世界遺産】金峯神社 
吉野山の奥千本にひっそりと立つ古社で、金峯山(吉野山から大峯山上ヶ岳一帯)の地主の神 金山古命(かなやまひこのみこと)を祀る。中世以降修験道の行場として知られる。

拝観料:無料

金峯神社にもお参り。神社の入り口近くに休憩スペースがあるので、そこで先ほど買ったお弁当を食べる。この時、ちょうど帰路につく若い女性グループの「帰って来た~!!!」という会話が聞こえてきた。何をそんなに大層な…と思ったのだが、1時間後、その真意が分かることとなる。

西行庵

金峯神社から続く目的地・西行庵までは徒歩20分。この頃になると「はいはい、徒歩20分ね」と感覚がだいぶ麻痺してくる。ただし、西行庵に行く徒歩20分はそれまでの道のりとは決定的に違う。

山道、ほぼぬかるみ!!

この時ばかりは登山用シューズを履いて来るべきだったと後悔。20分の半分くらいはぬかるみの山道を登っていたような気がする。途中、ちょっと西行を恨んだことはここで懺悔する。

それでも途中から山頂付近の桜が見えてくるとテンションは急上昇!!!

そして、ようやく頂上に到着。

西行庵がある公園からの眺め

『楼門五三桐』の石川五右衛門よろしく「絶景かな」の台詞が思わず口からこぼれるほどの絶景。

西行庵は、平安時代の最末期に西行法師が2年余り過ごしたところに建てられたもので、頂上の展望エリアの脇に立つ。私も含め桜シーズンの観光客が、お昼を食べたり絶景を楽しんだり山登りの苦労をねぎらったりで賑々しいため、西行がこの地で過ごしたことに思いを馳せるなどの、しみじみとした趣は皆無!(険しい登山を乗り越えた達成感でそんな感慨に気持ちを切り替えられなかった(笑))

苔清水

しばらく西行庵の近くで桜を愛でた後はさらに奥に進み、西行法師が詠んだと伝わる
とくとくと落つる雫の苔清水 汲み干すまでもなき住処かな
という歌で知られる苔清水に行く。

そして苔清水の先にある、少し開けた場所で奥千本の中でも最高の絶景に出会う。

この絶景のためなら(中千本からの)約2時間、登山する価値はある!!!

遠くまで続く山々、深く落ちるような木々の緑の中で、桃源郷のように咲く山桜。この世の光景とは思えないほどの幻想的な風景が眼前に広がり、心が洗われるようでした。

ここから下山ルートを通り、先ほどの金峯神社の鳥居前に出る。

「帰って来た~!!!」

1時間前に聞いた女性グループの言葉が、今度は自分の言葉として出てくる。帰りは先ほどの「修行門」の前から出ているケーブルバスに乗り、中千本(竹林院前)まで戻る。

行きの時に出会った警備員さんに「どうだった?」と聞かれたので「行って良かったです!」と答える。警備員さん曰く「行かなきゃよかった」と答える人と、「行って良かった」と答える人で分かれるという。確かに桜の開花状況で印象は全然違うだろうなと。個人的には奥千本まで行くなら、奥千本の開花シーズンに合わせた方が良いなと思った。下千本~中千本までは寺社巡りや参道のお店などの散策ができるので、桜がなくても楽しめるが、奥千本はやはり桜があってこその感動も大きい。

帰りのケーブルバスは20分程待って乗車。

ケーブルバス

下千本エリア(金峯山寺など)のレポートに続く。

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