『ゴールデンカムイ』聖地巡礼旅と銘打った今回の旅。ウポポイは直接漫画とは関係ありませんが、開館当時から気になっていた施設だったので、行ってきました。
ウポポイとは?
ウポポイ(民族共生象徴空間)とは、アイヌ文化の継承、振興を目的とした施設で、中核となる 国立アイヌ民族博物館は、初めてのアイヌ文化についての研究、調査、展示を行う国立施設になります。
「ウポポイ」という愛称ですが、これはアイヌ語で「(大勢で)歌うこと」を意味します。
ウポポイでは博物館での展示を見学するだけでなく、園内の施設でさまざまなアイヌ文化を体験することもできます。
ウポポイへ行くには?二風谷コタンと合わせて行く?
ウポポイは白老町にあり、札幌からだとJRで白老駅まで行きます。特急だと1時間ほど(約3,000円)、普通列車だと2時間ほど(約2,000円)。私は1日ウポポイで過ごす予定で時間も十分にあったので普通列車で行きました。
ちなみに私は今回ほぼ1日ウポポイに居ましたが、『ゴールデンカムイ』ファンなら二風谷コタンにも行きたいところですよね。バスでウポポイと二風谷コタンに行くツアーもあるようです。
私が見つけたツアーは、それぞれの滞在時間1.5~2時間なので、じっくり過ごしたいという人には向いていませんが、「どうせならウポポイと二風谷コタンをまとめて行きたい」という人はツアーが開催されているかまず調べてみてください。
イランカラプテ!初めてのウポポイ体験
JR白老駅から徒歩12分ほどでウポポイに到着。開館時間の9時に合わせて行ったけど、他にも家族連れの方々などが既に来ていました。駅からウポポイまでの道中では「イランカラプテ」(アイヌ語で「こんにちは」の意味)の言葉に溢れていました。
9時前後に駐車場にいたら、なんと館内放送でアイヌ語のラジオ体操が流れてきました!!聞きなれたメロディーとアイヌ語が不思議な感じ。
このラジオ体操が開館の合図なんでしょうか?(確認しそびれました)アイヌ語のラジオ体操なんて滅多に聞くことないので、早起きは三文の得ですね。
ウポポイでは時期によって開館時間や体験プログラムのタイムスケジュールが違うので、事前に時間やどんな体験ができるのかチェックが必要です。
ちょうど8/28(日)で夏のシーズンが終わり、以降はグリーンシーズン(8/29~10/31)となって体験プログラムの数が平日だと少なくなってしまうので、夏シーズンの最終日に行ってきました!
ウポポイに行くなら、開館時間や体験プログラムのタイムスケジュールを事前にチェック!!
ポロト湖に面した雄大な自然を満喫
園内に入るとまずスケールの大きい大自然に圧倒。施設内の中心部にある大きな湖は「ポロト湖」。アイヌ語でアイヌ語の「大きい・湖」に由来し、西側にあるポント湖(=小さい・湖)と対になっています。
ついぼーっとしたくなる風景。つくづく「北海道はでっかいどー!」を実感。都会から来た人にはまずこれだけでも十分に現実逃避な時間。
ウポポイの中核:国立アイヌ博物館
ウポポイにはいくつかの施設があり、それぞれでイベントや展示がされていますが、その中でも中核になっているのが一番大きな建物にある「国立アイヌ博物館」。
ワンフロアで、中央はアイヌ文化を象徴する衣服や工芸品が象徴的に展示されており、その周囲に「私たちのことば」「私たちの世界」「私たちのくらし」「私たちの歴史」「私たちのしごと」「私たちの交流」という6つのテーマの展示があります。
開放的な空間で、モニターからアイヌの子守歌が聞こえてくるなど、視覚情報だけでなく音からもアイヌ文化を体験します。アイヌ民族は文字を持たず、口承によって文化や思想も受け継がれてきました。そうしたアイヌの文化だからこそ、「音」での理解(体験)はものすごく重要だと思います。(もちろんそれらをすぐ理解できるわけではないですが、言葉のリズムを何となくでも感じることは重要だと思います。)
『ゴールデンカムイ』を漫画で読んでいてアイヌ語やアイヌの人名など勝手に脳内で再生していましたが、アニメを見てイントネーションが自分が思っていたのと違うということが何度かあったので、『ゴールデカムイ』に関しては漫画だけでなくアニメも観るのがおすすめ!
先人からの言い伝えなどを文字ではなく「言葉」のみで理解し伝えていたというのは、文字文化が当たり前な私たちにとっては想像できないですよね。
『ゴールデンカムイ』のアイヌ語監修をされた中川先生のトークイベントでも、アイヌの人々の記憶力はすごいということを仰っていました。
信仰・文化・歴史・そして現在…
アイヌの衣服や工芸品は他の美術館や博物館でも見ることができますが、やはり国立というだけあって、ここでは機織り機や熊送りの際の熊に施す飾りの再現など、他ではあまり見ることのできない展示もあります。
興味深いのは「過去」のことだけでなく、現在までアイヌ文化やアイヌにルーツを持つ人たちが現在どのように生きているか、という展示もありました。母親がアイヌ民族出身という俳優・宇梶剛士氏が手掛けた舞台の台本など、「宇梶さんそうだったの!?」という驚きと共に、現代において「アイヌ文化」をどう守り伝えていくか、という事をリアルタイムで創造・検証していこうとする過程も、この博物館では示していこうとしているように感じました。
アイヌ文化に気軽に触れる!豊富な体験プログラム
ウポポイでは様々な体験プログラムが日々開催されています。入館したらまずは体験したいプログラムの申し込みをするのがおすすめ!申し込みは各館に行って受付をしないといけないので、これはもう「ディズニーランドのファストパスのためにまず走る!」感じと一緒(笑)
朝9時に入館して、私は10時~の「刺繍体験」、14時~の「ムックリ製作体験」を申し込み。ムックリ製作体験を申し込んでる時に、同じ館で15時から「トンコリ演奏体験」をやっていると知り、ついでにそちらも申し込みました。
一通りの申し込みができたら、博物館の入館受付。博物館は事前に入館時間の予約することになっていますが、まぁ混んでなければ割とチェックも厳しくないようですし、入りたい時に受付に行って申し込み、そのまま入ればOKです。
そうこうするうちに、9時半に屋外ステージで「ウェルカムショー」が始まりました。冒頭は聞き逃してしまったけど、アイヌ語でのおもてなしの言葉を聞き、続いてムックリの演奏。マイクを通しているとはいえ、思っていた以上にムックリの音が大きく音色が豊か。アニメ『ゴールデンカムイ』でもムックリの演奏シーンはあったけど、ライブだともっと複雑で音色の違いが分かりやすい。
これは午後のムックリ製作体験が楽しみになって来た!!
アイヌ文様刺繍体験
ショーを見終わったのが9:45頃。軽く園内を歩いていれば、もう10時からの刺繍体験の時間に。
刺繍体験では、アイヌの文様の基本的な形を自分で刺繍することができます。作れるものは、コースターなら無料、有料(1,000円)でマスク、あずま袋に刺繍することができます。
私はあずま袋をチョイス。受付の時に記事の色と刺繍する糸の色(5色)を選んで、オリジナルのアイヌ文様グッズを作ります!
アイヌの衣服の刺繍には様々な技法が使われていますが、その中でも今回は「チェーンステッチ」と呼ばれる技法で、アイヌ文様の基本構成である「渦」「トゲ」が入った文様を縫っていきます。文様自体はすでに下書きがされてあるので、縫うところから始めます。
スクリーンでチェーンステッチの縫い方の説明を見て、いざ一糸入魂!!
この輪っかの大きさは針を刺す位置で大きくも小さくもなるので、人によって細かくなったり大きめの輪になります。輪の大きさ自体は好みでいいそうですが、それを一定にするのが難しいところ。これを服の全体にさらに複雑な文様を刺繍していたのかと思うと恐ろしすぎる…
これだけでも十分素敵だけど、スタッフさん曰く、このラインに沿って横に別の色で同じように刺繍するのもまた雰囲気が変わってオシャレだそう。実際のアイヌの装束でもラインを二重にして装飾しているものもあるとのこと。
慣れないとはいえ40分でできるのがこの範囲…1着の中であれだけの刺繍をするとなったら途方もなさすぎて、アシリパさんじゃないけど無理!!!いかに手が込んでいるかを実感できると、こうした刺繍が施された衣服が晴着であったこともうなずけます。
体験した後だと、展示の装束をみても文様の柄だけでなく刺繍の技法にまで目が向くようになりました。実際にはチェーンステッチの他にも様々な技法が用いられており、1着1着手が込んでいます。
弓矢遊び体験
刺繍体験後、チセ(アイヌ民族の家)を再現した「伝統的」エリアを見学していたら、11時から「弓矢体験」があると知り、そのまま受付の列に並びます(弓矢体験は事前申し込み不要、開始時間までに列に並ぶ)。
体験は一人3本の矢を的にめがけて放ちます(約5分)。貝の的に向っていざ!
最初の1本は何と的に命中!!ビギナーズラック!!!この勢いで2本目も…と思ったらここで急ブレーキ。矢と弓を一緒に握り込んでしまったり、矢を離す時の思い切りが足りず、すぐ足元にポロリと落ちたり…と、先程の1本が「ビギナーズラックもビギナーズラック」だったことが露呈。
矢を離す時は「パッと一瞬で放す」というアドバイスを受けて何とか2本目、3本目も遠くに飛ばすことはできましたが、結局的には当たらず。基本的に矢を外さないアシリパさんすごい。
ムックリ製作体験
ムックリ(口琴)という伝統的なアイヌの楽器は、漫画でもオソマちゃんが披露しています。そのムックリを自作できるなんて!
ちなみにミュージアムグッズとしてショップでも1,000円でムックリは売っていますが、同じ1,000円で製作体験&簡単な演奏の仕方のレクチャーまであるので、どうせなら体験した方がお得(ムックリへの愛着も湧きます)。
体験では楽器の形自体は既に出来上がっており、弁となる中央の部分の木を薄く削っていくというものですが、それだけでも大変!思い切りやって竹を割ってしまわないかという不安もありつつ、でも薄くしなければ響くような音が鳴らないので思い切りも必要。
各自に見本が置いてあるので、見本と見比べたり触ったりしてどのくらい削ればいいかを確認しながらドンドン削っていきます。
ある程度削れたら最後はスタッフさんに仕上げの一刀。初めてだと厚さが一定にならないので、厚さ調整と表面のなだらかさを調整し、紐を括りつけて完成!
製作ができたら、基本的なムックリの音の出し方のレクチャーもあります。最初は力加減が難しかったのですが、スタッフさんがコツを教えてくれて何とか数回に1回は鳴らすことができました!
ムックリの演奏の様子と音色についてはこちらの動画をご覧ください。実に不思議な音色。
割と思いっきり紐を引っ張らないと弁がいい感じに震えないので、結構難しいです!家に帰ってからも時折練習してますが、すぐ腕が疲れて安定しない。オソマちゃん凄い!
トンコリ演奏体験
本日最後の体験は「トンコリ演奏体験」。トンコリという弦楽器は一見ギターのように弾くのかなと思えますが、指で絃を押さえて弾くことはなく全て開放弦で、左右の指を使って絃を弾きます。
肩に立て掛けるようにして持ち、左手で左手よりの絃2本、右手で残りの右寄りの3本を弾きます。
ギターやヴァイオリンなどの弦楽器と違って指で押さえないから簡単!と思いきや意外と慣れないと慌ててしまう(笑)あとアイヌの音楽のメロディーが独特でした。
職員さんの練習風景動画。前半がトンコリ演奏の練習風景ですので少しだけ音色をきくことができます。
その他にも様々なイベント・ショーが開催
時間的に私が体験できたイベントは以上でしたが、その他にもアイヌの伝統舞踊の上演やアイヌ文化についてのアニメーションの上演、ポロト湖に丸木舟を浮かべる実践・解説、アイヌ語講習などさまざまなプログラムが開催されています。
全部を体験は難しいので、事前にタイムスケジュールを確認して優先順位をつけて効率的に巡ることができるようにしておきましょう!
ウポポイグルメ
ウポポイのご飯どころは、下記の通り。
・レストラン:焚火ダイニング・カフェ ハルランナ
・フードコート:ヒンナヒンナキッチン 炎(ラーメン、そばなど)
・カフェ:カフェ リㇺセ(オハウ定食やカレー、フライドポテト、芋餅など軽食系)
・ななかまど(ソフトクリーム、クリームチーズ、パイなどスイーツ)
焚火ダイニング・カフェ ハルランナ:エゾ鹿と白老牛の合挽ハンバーグ
ちょっとリッチなランチがしたいならここ!周りのお客さんが頼んでいた「肉3種食べ比べプレート」は大きいお皿にお肉が盛られていて、横で見ていた私もちょっとテンションが上がる豪華さでした(笑)複数人なら「食べ比べプレート」もおすすめ!!
カフェ リㇺセ:ペネイモ(いももち)のぜんざい
レストランでご飯を食べた後にカフェの存在を知ったけど、こちらはカレーが800円台、オハウセットが1,200円~なのでランチとして手頃。こっちもお店があったのか!!ってか予算的にはこっちの方が良かった!(笑)
さすがにランチを2巡するわけにはいかないので、デザートにペネイモのぜんざいを注文。ペネイモとはジャガイモを凍らせて作ったアイヌのお菓子。
ペネイモ自体はあまり味がしない気がしましたが、でも当然ながら、あんこに良く合う!そして腹持ちの良さは抜群。こちらのお店はカウンター席に充電用のコンセントがあったので、電池難民になった時はここで休憩もあり。
ちなみにフードコートのメニューはこんな感じ。お値段的には一番お手頃ですが、日曜(8月最後の日曜日)ということもあってか、お昼時結構並んでいました。
ななかまど:最後はソフトクリーム
お昼ご飯とデザートの芋餅ぜんざいまで食べて相当お腹いっぱいだけど、手ぶらで帰るのも寂しく、最後の締めにソフトクリーム!
まとめ
1日ウポポイを満喫した感想としては、「アイヌをテーマにしたテーマパーク」といった感じ。アイヌ文化に対して既にそこそこの知識があり、「もっとしっかり歴史や文化を知りたい」という人には物足りなく感じるかもしれませんが、これからアイヌ文化を知りたいという人の入り口としては「楽しみながらアイヌ文化に触れる」ことができる施設だと思いました。
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