『それSnowManにやらせて下さい』で再確認したs**t kingzのダンスの魅力

エンタメ

先日の『それSnowManにやらせて下さい1時間SP』(TBSテレビ)で、ダンス日本一の山村国際高校ダンス部、芸能人チーム、SnowManの3チームでダンス対決をする企画。

SnowManチームの振付担当としてs**t kingz(シットキングス、以下シッキン)が出演した。ちなみにSnowManの『オレンジkiss』の振付をNOPPOさんが担当した縁もある。

ちなみにNOPPOさんが『オレンジkiss』の振付についてラジオで解説した時のまとめはこちら。

この番組を見て、改めて「シッキンのすごさ」(と言うか私がシッキンのダンスの何が好きなのか)がハッキリとわかった。ファンになると個人個人のキャラクターや関係性などの部分も知るようになり、そこも好きなポイントになってしまったので、一番最初の好きになった理由、一体何が良くて惹かれたのかという根源の部分が自分でもわからなくなっていた。

しかし今回、自分の好きなシッキン4人ではなくSnowManがシッキンの振付を踊ることでで、シッキン4人のキャラクター、関係性といった部分を排除して、ダンス(振付)そのものの魅力が鮮明になったので、備忘録として認めておく。

「ダンス対決」企画について

企画はそれぞれのチームが同じ曲(下記の4曲〈ショートバージョン〉をつなげた音楽)で振付を作り披露するというもの。

①Queen -「Don’t Stop Me Now」
②The Black Eyed Peas 「Pump It」
③SMAP「SHAKE」
④The Greatest Showman Cast「This is Me」

よもつ的3チーム評

番組を見終わった直後に自身のファンアカウントのtwitterで呟いた感想がこちら。

素人の第一印象だけど、
高校生:コンテストを勝ち抜くダンス
芸能人:ショーとしてのダンス
SnowMan(シッキン振付):演劇のダンス
だったな。やっぱり芸能人、SnowManチームになるにつれて「踊れることを見せる」んじゃなく「踊ることで(表現したいことを)見せる」だった。

この3チームのダンスは優劣ではなく、それぞれが三角形の頂点のように、ベクトルが三者三様の方向性で突き詰めていく感じだった。

高校生チームは、言い換えればスポーツ。シンクロナイズドスイミングのようで、個々人の技術の高さとシンクロ率を課題曲の中にふんだんに散りばめて高得点を狙っていくスタイル(奇しくもコスチュームもシンクロナイズドスイミングのような全員お揃いの衣裳・コスチューム)。曲の中に持てる技術を詰め込んでいるので、良く言えば「見応えたっぷり」、あえてネガティブに言えば「余白がない」。料理にたとえれば「肉料理4種」というようなモリモリコース。

芸能人チームはそれぞれの個性(持ち芸、キャラクター性)をアクセントにして構成する、当て書(演者の俳優のために書き下ろした脚本)ならぬ「当て振り」となっている。高校生チーム、SnowManチームと異なり、多様な分野で既に活躍している人たちによるチームのバリエーションの豊かさとキャラクター性を全面に押し出した構成だった。料理にたとえれば「バイキングで好きな料理を4種盛った特製プレート」という感じ。

さて、SnowManのダンス(シッキンの振付)はというと、「SNOW」の文字を作ったりラストのアクロバティックを取りれてはいるけど、基本的なダンスの方向性としては、SnowManの個性やキャラクター性に頼らず、音楽の構成に合わせた起承転結を明確につけたダンスだった。料理にたとえれば「前菜&スープ→魚料理→口直し→肉料理→デザートのフルコース」。

この上質だけど気負いなく楽しく食べれるフルコースを作れるのがシッキンなんだ!!!(泣)

なのでどの料理が上とか下ではなく、今回の審査員にとってはこのフルコースがハマった!という事だと思う。そして私も改めて「これこそ私がシッキンを好きな理由だ」と再確認できた。

ということで、このフルコースを掘り下げていこう。

シッキンの演劇的(フルコース的)ダンスの魅力

ここからは、SnowManチームのダンスパフォーマンスに焦点を当てて語りたい。

まずは全体だが、私が視聴直後にtwitterで定義した「演劇的」、そして先ほど「フルコース」とたとえた構成とは、4曲がちょうど「起承転結」の「起・承・転・結」になっていることを指している。

《起》「Don’t Stop Me Now」…前菜&スープ
《承》The Black Eyed Peas 「Pump It」…魚料理
《転》SMAP「SHAKE」…口直し
《結》The Greatest Showman Cast「This is Me」…肉料理+デザート

《起》「Don’t Stop Me Now」…前菜&スープ

冒頭、斜めに一直線で体育座りで並んで立ち上がる、まさに「起」き上がるところから始まる。そしてそんなに激しく動かない。「あれ?何かバチバチ踊る気配がないぞ?」という予感を見る人に投げる。踊り出したかと思えば急にタメを作ってゆっくりとした振りで緩急をつけて、見る人をググっと引き付けつつ‥‥かと思えば、今度は皆で片手を掲げてぴょこぴょこ飛び跳ねながら行進して、パッと構成を外に広げる。しかもそれがそんなに激しい踊りではなく、なんなら素人の私でもぴょこぴょこ跳ねるとこならできるんじゃないかっていう位、可愛いくキャッチーな振りなので、緩急があれど見てて疲れない。

この「見てて疲れない」は結構大事じゃないかと思う。これが特に高校生チームとの違いだと思うけど、高校生チームがド頭からしっかり作り込んだ踊りで、すごい技術があり、それをふんだんに見せる構成だった。もちろんその迫力の魅力はあるけれども、4曲構成ということを考えたら、最初から最後までが全て「気を抜いたらいけないという圧」があった。

演劇や映画でもストーリーの頭から終わりまで終始MAXの状態という事はない。演出手法として冒頭に迫力のあるシーンを持ってくることもあるだろうが、基本的には冒頭は見る人にその世界に没入するための導入を作っていく必要がある。そこがいきなり核心的なことからスタートすると見る方は置いてけぼりのままになってしまう。

改めて3チームのダンスを見ると、その導入を時間をかけて作っているのがSnowManチームだったなと思う。最初から技や個性をアピールしない。焦らずに前菜とスープを楽しみながら、これから続く料理へのワクワク感を高める、そういう時間にこの曲を充てている。

《承》The Black Eyed Peas 「Pump It」…魚料理

《承》に当たる2曲目では、1曲目で提示した可愛さやコメディタッチの方向性を、「釣り」や「もぐら叩き」のダンスでさらに増幅させている。そういう意味で起承転結の「承」として相応しい展開。しかし、このセクションの前半はかなりコメディに寄せているので、このテイストが曲の後半、あるいは3曲目以降続いたらダレるか飽きてしまうと思うが、”しっかり遊ぶ”場所をこの前半に絞っているからこそ、この”遊び”がアクセントとして効いている。

もぐら叩きダンスの後は、ラウールさんセンターでしっかりダンスを見せて(と言いつつもまだ全力ではない)、さらっと「面白いだけじゃないんだぜ!」と見せて、後半はかっこいい系でせめるのかなと思わせておいて…次のあのダンスにつながる!

《転》SMAP「SHAKE」…口直し

イントロで「SNOW」から「SMAP」というエモい演出で見る人を油断させておいて、思わず審査員のSAMさんも手を叩いてしまったTシャツダンス。これはほんと度肝を抜かれた!!色んなアーティストやアイドル、ダンサーたちがダンスをしてきて、もう「○〇ダンス」なんていうのは出尽くした感があったのに、まだこんな表現があったのか!!!

起承転結の《転》とは、物語が大きく展開していく、あるいは急展開となるセクションで、このTシャツダンスはまさにその「転」の役割を担っている。そして、Tシャツの中に両腕を入れてシャツを内側からバタバタさせたり、首や裾から手を出すという、まったく異質なダンスで観客に最大のサプライズとインパクトを与えつつ、そのコミカルでキュートなダンスが、この後に続くメインディッシュ曲の前のお口直しにもなっているのだ。

ここまで振り切ったダンスにしているのは、SMAPの「SHAKE」という曲がこの4曲の中でどういう位置づけかというのを把握しているからだと思う。4曲中唯一のJ-POPで、しかもアイドルソング。アイドルの曲が他のアーティストの曲に劣ると言うつもりはないが、例えば歌唱力でSMAPよりも上手いアーティストはたくさんいるだろうし、「SHAKE」の他にもたくさんJ-POPの名曲はある。

じゃあこのSMAPの「SHAKE」という曲の価値は何か、この4曲の中で「SHAKE」にしかない特徴って何かって言えば、もう理屈抜きの底抜けの「ゴキゲン感」じゃないだろうか!この明るさ、このワクワク感、上がる感じはSMAPというアイドルグループだからこそできることで、抜群の歌唱力があったってできない、他の3曲には出せない唯一無二の価値だと思う。

見れば見るほど、Tシャツダンスの可愛さ、キャッチーさ、面白さは、単に「意表を突く飛び道具」ではなく、アイドルというエンターテイナーの存在意義をも示しているようにも思える。アイドルである彼らにしか歌えない歌、彼らだからこそ届くメッセージが確かにあって、それをSMAPの「SHAKE」が象徴し、今SnowManに託されている。

《結》The Greatest Showman Cast「This is Me」…肉料理+デザート

そして最後の曲は、壮大な曲調に合わせてミュージカルのようなスケールの大きい振付、そしてアクロバティックな動きも入れてクライマックスに相応しい展開となっている。この最後の曲を肉料理にたとえたように、ここに一番ウエイトを置いて、SnowManのスキルを集中させた構成にして、曲がラストに向かって壮大になっていくのと相まって見る人に「あぁやっぱりダンス上手いわ~」って唸らせるように(確信犯的に)仕向けている。

そして、私がこのセクションを「肉料理」だけにせず、あえて「デザート」と付けているのは、曲のラストに、これまた度肝を抜かれたからだ。他のチームが「🎵~this is me!」と高らかに歌い上げてバシッと曲が終わるのに合わせてラストの決めポーズを決めていた。これが誰が見たって一番気持ちい終わり方だ。

しかしSnowManチームはその瞬間には全員で横一列で手を繋いで手を挙げて終わった…と見せかけて、そのままみんなで寝転がり、上半身だけを起こす。誰もが想定していなかった「曲の終わった後の時間」までをも自分たちのダンスに組み込んだのだ!

このわずかな間(ま)をわざわざ入れるってすごくないですか?メインディッシュを食べきって「大満足!」という一番ハイな状態で終わらせるのではなく、デザートを食べながらそれまでの食事の余韻に浸るように、それまでのダンスの時間を楽しかった時間として見る人にも刻み込むように、あの「寝っ転がって起きる」というひと振りがあるように思えた。

よもつ
よもつ

茶道で、お茶を点てた後に水を一杯釜に入れるのだけど、それによって一気に釜の温度が下がって、それまで「シュー」といっていた釜の音がピタリと止む瞬間がある。その瞬間にそれまでの茶席の時間の余韻が空間全体に広がっていく感覚になるのだけど、その時の感覚に近いかもしれない。曲が終わったあとに寝転んで起きるという動きを入れることで「音がなくなった(楽しい時間は終わった)」という事を意識的に感じることで広がる余韻。

なくても成立するけど、これがあることで不思議な余韻が広がるし、「音がある瞬間だけがダンスの時間じゃないぜ。ダンスの主体性を奪われるなよ!」っていうメッセージにも感じた。

「だんしゃべ」での解説(2022/9/25放送)

さて、9月25日に放送されたラジオ「ダンサーだってしゃべりたい」でこの時のダンスについてshojiさんが解説してくれました。曲は4人がそれぞれ1曲ずつ振りを付けるのではなく、全て4人であれこれアイデアを出し合いながら作っていったそう。

そして、振りを作る中で、高校生チームはシンクロ率を極めて来るだろう、芸能人チームはそれぞれのキャラクタ―性を飛び道具にした構成で来るだろうと想定し、全員集まって練習する時間がほとんど取れないというハンデをクリアにするためにも、その勝負に「乗らない」ことを戦略として考えたと言います。

(後出しで言っても意味ないけど)これ、私が当初感じてたこと!もし今回の勝因(他のチームの敗因)を挙げるとしたら、この「戦略」があるかないかだけかもしれない。他のチームは「自分たちの最高のパフォーマンス」のことだけを考えていて、SnowManチーム(というかシッキン)は他のチームがどういうパフォーマンスをしてくるかというとこまで想定した上でその上でSnowManチームが勝てる勝負の仕方を提案した。

さすが世界で2連覇しただけのことはある。”みんなでワチャワチャしながら楽しく作りました感”出しておいて、しっかり勝ち方を知っているとかズルい、ずるいぞシッキン!!!(笑)

あっ、思いつくままに書いたので、シッキンのダンスの好きなところがまだ書けてなかった。やっぱりこの起承転結を作って、まるで一本の芝居を見ているかの様な構成力だと思う。これは最近よく言っているのだが、多分私はシッキンのダンスやショーを「ダンス」というよりは「演劇」の感覚で観ているんだと思う。俳優が台詞をしゃべる舞台と同じで、彼らの言語がダンスなだけで、基本的な見方は一緒なような気がする。

あと録画を見直して思ったけど、他の2チームが課題曲である4曲を「自分たちのパフォーマンスのために使っている」のに対して、SnowManチーム(シッキンの振付)は、「4曲それぞれが持つメッセージやフィーリングのために自分たちのパフォーマンスがある」というスタンスなんだなと思う。だからSnowManの各メンバーの個性(キャラクター性)に頼る必要がなかったし、他のどのチームよりもそれぞれの曲で全然違う味付けの振付になった(そしてそれを汲み取ったからこその結果だった)のかなと思った。

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