茶道を習い始めてから、行こう行こうと思いつつ、なかなか機会がなかった五島美術館。
「ぐるっとパスの期限が切れる!」ということもあって、「茶道具取合わせ展」に行ってきました。
名品揃いの展示は圧巻
五島美術館は、東急グループの礎を築いた、五島慶太(ごとうけいた)氏が蒐集したコレクションを管理・展示する目的で設立されました。
国宝の「源氏物語絵巻」や「紫式部日記絵巻」といった名品から、仏教美術、書、そして茶道具を中心としたコレクションは、五島慶太氏の審美眼の確かさ、文化を守り継承しようという情熱を物語っています。
風格漂う「鼠志野 銘 峯紅葉」
最初の展示室の中でも、最初のメイン作品として登場するのが、鼠志野の「峯紅葉」。
堂々たる風格!!!個人的に鼠志野の作風は、その瀟洒な色、デザインが好きなのですが、この器は、それに加えて、重厚感も漂います。きれいな鼠色ではなく「峯紅葉」の名のごとく、全体に赤味がかっているところに、”きれい”なだけではない奥行きを感じさせます。
茶会に出たら”降参!”の存在感を放つ「古賀水指 銘 破袋」
一度見たら絶対に忘れない強烈なインパクトの「古賀水指 銘 破袋」。
もしお茶会に招かれて、この水指が設えてあったらと想像すると、「もう参りました!!!」ってなっちゃう(笑)。思わず笑ってしまうんじゃないかと思う位の見ごたえ。こんなに「メイン」になる水指って他にあるかしら。
形の面白さもさることながら、やはり本作の見どころは、底部のひび割れでしょう。ぱっくりと割けたこのひびが、自然の力(偶然)で生み出された器のエネルギーを物語っています。この「ひび」こそ、この器を「失敗作」ではなく「名品」へと押しやっていると言っても過言ではないでしょう。
徳利と盃の取り合わせにキュン!!
展示されている茶道具はどれも名品揃いなのだけど、個人的に一番ウキウキとしたのは、徳利と杯の取り合わせ。4ペアほど展示されていましたが、同じ窯の器で揃えるのではなく、時代も場所もバラバラの組み合わせで、コラボレーションの妙を楽しみます。
一番すてきだったのは「絵粉引(粉青粉引鉄絵草花文扁壺)」と「祥瑞桝形盃」の組み合わせ。素朴な風合いで、丸い大らかな姿の徳利と、青と白という祥瑞でしかも桝形というスッキリとした姿の盃。色も形も醸し出す風情も違うけれども、だからこそその取り合わせ絵が楽しい。
重要美術品「伯庵茶碗 銘 冬木」にうっとり
今回の展示で初めて知ったのが「伯庵茶碗」。展覧会のポスターにも登場している茶碗です。
将軍家に仕えた医師・曽谷伯庵が「本歌伯庵茶碗」を所持していたから呼ばれるようになったとのことからとのこと。一見「黄瀬戸茶碗」のような風合いですが、土や高台の作り方などが違うそうです。伯庵茶碗の特徴は、全体に黄色っぽい枇杷色の釉薬がかかり、所々にかかる緑色のような海鼠釉によって景色が浮かぶ点です。
均整の取れた形、決して派手ではない落ち着いた色調、滋味深い趣に満ちていますが、海鼠釉がアクセントになって存在感を放っています。
庭園散策ーー冬の寒さも一興
美術館の裏手側には庭園が広がっており、3つの茶室(非公開)が保存されています。庭園を一周していると、小高い丘からちょうど二子玉川方面の眺めを見ることができます。
さすがにちょっと寒かったけど、それもまた一興。四季折々の景色を楽しむのが、日本庭園の魅力の一つですよね。
美術館が所蔵する珠玉の茶道具。まるで名品揃いの茶会に招かれたような贅沢な気分を味わうことができました。
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