今回から各地での聖地巡礼のレポートをお届けします。
※漫画のネタバレを含みますのでご注意ください。
物語の第1章の決戦地である「網走監獄」。パノプティコンと呼ばれる放射線状の建築が有名で、漫画に関係なく一度は行ってみたかった場所。と言いつつ、東京からでは物理的、精神的距離があって機会がなかったのですが、『ゴールデンカムイ』という最高のきっかけを得たので、ようやく思い切ることができました!
タイムスケジュール
<8月26日>
12:55 成田空港発⇒15:00 女満別空港着⇒バスに乗り換え
16:00頃 網走駅着(ホテルにチェックイン)
この日は網走駅周辺を散策(海のギリギリまで行ってオホーツク海を眺める)
~1泊~
<8月27日>
9:09 バス移動(網走駅⇒監獄博物館前)
9:30 「網走監獄」着
12:30 網走食堂でランチ
13:50 バスで網走駅に戻る⇒JR北見駅
16:00 北網圏北見文化センターで企画展を鑑賞
23:55 夜行バス(北見ー札幌)で車中泊
できるなら朝一番の便で女満別空港着⇒午後に網走監獄、が一番効率が良いと思います。網走監獄は平均2~3時間あれば十分回れる広さです。
前泊で網走に上陸!
女満別空港からバスで約20分(920円)で網走駅に到着。空港の到着ロビーを出た所にバスの自動券売機があるので、そこで網走駅行きのチケットを購入。出口を出てすぐのバス乗り場(1番乗り場)で該当のバスに乗ります。2番乗り場が北見行きなのでお間違いなく。
バスの便は飛行機の到着時刻に合わせているようなので、待ち時間のロスもありません。その代わり乗り遅れたら次の便まで時間が空いてしまうので、お早めに!
網走駅までの道中、窓から網走湖の眺望を満喫。バスの左側に湖が見えたのだけど、私が座ったのが右側の列だったため、せっかくのシャッターチャンスを逃してしまった。残念。
最果て感が漂う網走駅前~網走港
ホテルにチェックインした後、晩ご飯の時間まで近くを散策。「ここまで来たなら、一目でもオホーツク海を見ておこう」と、網走駅からさらに海の方向に歩いていく。
夕方で曇天だったことも相まって、網走駅周辺の”最果て”感がすごい。大通りに面した店も数軒おきにシャッターが下りている状態。事前にストリートビューで見てそんな気はしていたけど、そのイメージ通りに人の気配がない。
地元の人も観光客も基本は車移動で、歩いている人がほとんどいない。女性一人では心細い、というかちょっと怖い。ホテルの周辺や「道の駅」では観光客(ほとんどグループ)がいるのでちょっとホッとしましたが、やはり女一人で来ているような人は見かけなかった。
心細い気分は「網走監獄に潜入するまで杉元たちもこの辺りにいたかもしれない」という勝手な妄想を膨らませて紛らわせる。明日の網走監獄潜入への期待を抱いて、少しひんやりとした空気を吸い込む。
そして地図上で、歩いて行ける最大限まで海に近づいてみた!
ちなみに、私が泊まった「ホテルサンアバシリ」は、建物の裏が鉄道の車庫。部屋の窓からも電車を見ることができました。撮り鉄でも何でもないけど、この風景はちょっと来るものがある。北海道の最果てにある電車の終着駅…。「さすらった者たちが最後に行き着く場所」感がすごい。
ホテルサンアバシリ
網走駅まで徒歩2分の好立地。昔の民宿のような建物で、良く言えば趣がある、悪く言えばやや怖い。そんなロビーの雰囲気とは裏腹に、部屋の内装はロマンチックで可愛らしい感じでした!朝ごはんは「ザ・朝の定食」(ごはん、みそ汁、鮭の塩焼き、漬物、のり)で美味しかった。
網走監獄博物館
一泊して、いよいよ網走監獄!網走駅からバスが出ていますが、うっかり乗り間違えて「網走刑務所前」で途中下車。朝っぱらから人気の少ない「刑務所前」で虚無な時間を過ごす。
※「網走監獄」とは別に、現役の「網走刑務所」がある。紛らわしくて無駄にドキドキする。
「なぜ私は今、北海道の最果てで、一人刑務所に近い道路にポツンと立っているのか…」という思いに駆られながら待つこと15分ほど。永遠にも思えるような15分を過ごして、ようやく監獄行のバスに乗り込み、今度は間違いなく「網走監獄」に向かいます。
ネットで事前予約ができますが、HPにインターネット割引(10%OFF)があった!コロナ禍で事前予約制になったと思って慌てて買っちゃったけど、当日券売所でHP中の画面を見せれば割引が適用されるようです。ちゃんとHPを最後まで見れば良かった。
《注意点》
①公共交通機関を使う人は現金の準備を!
②網走監獄前のバス停には屋根がないので、天気が良くない時は傘かレインコートの準備を!
(見学エリアでは傘の貸出あり)
旧庁舎
館内パンフレットにも記載されていますが、各建物を見る前にまずは旧庁舎に立ち寄りましょう!
網走監獄の庁舎で、網走監獄の長官である典獄室(作中でも犬童典獄の部屋として登場)があるのもこの建物。現在はショップと北海道の監獄についての展示があります。
ショップの脇にはもちろんこの男!!白石由竹が描かれた野田先生の色紙!!
展示エリアでは、北海道の各地にある刑務所の解説の他、網走監獄の建物の見どころや構造を解説してくれています。
舎房及び中央見張所
敷地内の一番奥に、網走監獄を象徴する放射線状の舎房。大きいのでカメラにその全貌を収めるのは無理‼パンフレットによると、1912(明治45)年に誕生してから1984(昭和59)年までの72年間使われていたとのこと。
「思っていた以上に最近まで使われていたんだな」…って思ったけど、84年はもうそんなに最近ではなかった(笑)
舎房で『金カム』読者が最低限見るべきポイントは4つ!
①中央の見張所(門倉部長の気分を体験)
②”のっぺらぼう(替玉)”がいた第四舎の第六十六室
③杉元、アシリパ、白石が降りた天窓も第四舎
④杉元が出られなかった通風口も第四舎の第六十六室を探す
要は第四舎(独居房)の六十六室を中心に見ると網走監獄でのバトルの時のそれぞれの視点を味わえると思います。ちなみに門倉部長が牢の鍵を一斉に開けることができるレバーを引いていますが、実際にそんなレバーはありません。
正面玄関をくぐるとすぐそこに在った!中央見張所!!
第一~第三舎までが共同部屋、第四舎が独居房となっているので、”のっぺらぼう(替玉)”がいたのも第四舎。事前に部屋室まで確認しなかった自分が悔やまれる。それでもこの放射線状に広がる舎房を見た時の感慨はひとしお。建物としての整然とした美しさがあります。
上の写真、どことなく海外の美術館の廊下のような趣さえないだろうか?こういう徹底的にシンメトリーに作る感じ…。堪らない。
実際にドアの近くに建つと、私の身長(164㎝)よりもドアが低い。今よりも明治時代の平均身長が低いという事が分かります。
実在した「二人の脱獄王」の展示
ちょうど私が訪れた時は、網走監獄の「二人の脱獄王」という展示をしていました。今まで各キャラクターのモデルとなった人まで調べなかったのですが、なるほど「白鳥由栄(よしえ)」こそ、白石由竹のモデルのようですね!
実際に舎房に入ってみると、漫画でイメージしていたより建物全体が小ぶり(それでも十分広いのだけど)。やはりバトルシーンは迫力第一、杉元・土方陣営、第七師団、囚人たちが入り乱れて戦うには、通路の幅や見張台と各棟の距離感などは少し誇張しないといけなかったんでしょうね。
教悔堂
教悔堂は囚人たちに精神的、倫理的、宗教的な指導を行うための建物。作中ではこの建物の地下に、本物ののっぺらぼう(ウイルク)がいた場所であり、土方歳三と犬童典獄の因縁の対決の舞台になりました。
重厚な和風の外観に反して、中に入ると漆喰による真っ白で高い天井。広々とした空間が広がります。『金カム』でも、外観も、内部(シャンデリアやレリーフのデザイン)もほとんど同じように登場します。犬童と土方の「鎖デスマッチ」(第14巻)が目に浮かびます。
その他の建物も興味深い!!
記事では最初に舎房を紹介しましたが、舎房は敷地の一番奥にあるので、庁舎を出て右回りにぐるりと一周するのがベターなルート。漫画では網走監獄内での生活がどんなものだったかはそれほど描かれていないので、そもそも網走監獄で囚人たちがどのように過ごしていたのか、というのを知ることができるので、聖地巡礼という目的をすっかり忘れて、普通に「へ―そうなんだ」と思う事も多々ありました。
個人的に特に面白かったのは次の3つ。
裏門
敷地内に突如現れるレンガの塀は、囚人たちが監獄内のレンガ工場で作ったレンガだそうで、1919年当時のこの裏門は登録有形文化財に指定されています。
ここに監獄の前を流れる網走川と、そこから生活物資を運搬する受刑者のマネキンが!この感じ、見覚えある!!13巻で監獄に潜入するために鮭漁に見せかけて穴掘ってたシーン!!!野田先生は、この門を見て網走監獄の潜入方法を思いついたのかな?
囚人たちが農作業などもしていたことも初めて知りました!北海道の厳しい自然では、囚人らによって開拓を進め、自給自足をしなければならなかったんですね。
浴場
不正行為(他の囚人と接触)しないように、湯船が深くなっており、囚人らは立ったままで手は外に出して出して湯船に入ります。脱衣から着衣までトータル15分。浴槽が2つあり、3分刻みで「1つ目の湯船につかる⇒身体を洗う⇒2つ目の湯船⇒洗顔をする」というシステマチックな流れ。
湯気を通すための欄間のデザインが刑務所内の施設とは思えぬ趣深さがあります。
旧網走刑務所二見ヶ岡刑務支所
舎房との他に教悔堂、食堂、作物などの選定を行う作業場、炊場、浴室までが一体となった施設。「開放的処遇施設」という事のようで、刑務所というよりは合宿所のような雰囲気。
何となく囚人ということを忘れて”農作業で自給自足の集団生活をしている人々”と感覚が麻痺してきた頃に拷問具の展示。「あぁそうかここは刑務所で、(マネキンだけど)ここに居る人は囚人だった」と思い出す。
監獄食堂で監獄飯を体験
網走監獄内をじっくりと回ると大体2~3時間ほどかかります。それだけ過ごせば当然お腹もすいてきますよね。ということで、施設の外にある「網走食堂」でお昼タイム。
監獄食堂では、現在の網走刑務所で受刑者が食べるメニューを監獄食」として食べられます。A定食はさんま、B定食はホッケでした。ご飯は白米7割、麦3割で、味噌汁、焼き魚、副菜がついてきます。私はホッケのB定食を頼みましたが、魚も大きくて美味しかったです(品数だけならいつもの晩ご飯より豪華⁉)。他にも丼ものや麺類などメニューは豊富です!
網走監獄に来たらぜひご賞味あれ!
お店が混んでなければバスの到着時間までお店で休憩できるので助かりました!店内には『ゴールデンカムイ』も置いてあったので、聖地で手に汗握るバトルを読むのも一興。
お土産はもちろんこれ!
冒頭でもチラッと紹介しましたが、庁舎が現在ショップになっており、網走監獄オリジナルグッズもたくさん置いてあります。
とはいえ、私はやっぱり『ゴールデンカムイ』で!!
基本的には尾形百之助・土方歳三推しだけど、網走監獄に来て白石由竹を無視する訳にはいかないでしょ!ということで『ゴールデンカムイ』仕様の豆せんべいと巾着付きのバター飴ときびだんご。白石カラーの隣の紺色は鶴見中尉の軍服)
おまけ:北網圏北見文化センター
網走監獄の見学後は、聖地巡礼からは外れますが、大学の先輩が勤める北網圏北見文化センターに立ち寄り。美術館、博物館、プラ根タリウムなどの文化施設が集まっており、地元の文化を一手に担っています。
私が訪れた時は、ちょうど「ルーヴル美術館の銅版画」展の最終日。ルーヴル美術館の工房で製作されている銅版画の数々を堪能。レオナルドダヴィンチ《モナ・リザ》をはじめ、西洋美術史を代表作を銅版画で辿る展示でした。
線の細かさや線の入れ方で、作品のタッチが異なって感じられるのが銅版画の凄いところ。
久しぶりに会った先輩にも挨拶して北見駅へ。ここから夜行バスで札幌に向かいますが、時間を潰すところがほとんどない‼思っていた以上にない(笑)普段だったら図書館が8時まで開いていたようですが、この日に限って6時閉館。仕方がないので駅前で晩ご飯を食べた後、ほぼ4~5時間を駅のバス待合室で過ごすのであった。
【次回】聖地巡礼③小樽編に続く
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