中学生の頃、音楽の授業で習った「夏の思い出」。♪夏が来れば思い出す 遥かな尾瀬 遠い空」の歌がやけに強烈に残っており、「尾瀬=この曲」でした。ただ、ずっと「いつか行きたいな」とは思っていても、それこそこの曲以上の情報もなかったので、行動に移す決め手がないまま今に至っていました。
しかし、その決め手が先日起きました。大学の友人とご飯を食べていた際、彼女が「尾瀬に行きたいんだよね~」と言ったのです!おもわず「私も行きたい!!」と手を挙げ、そうしてとんとん拍子で(というか彼女が調べてくれて)尾瀬日帰りツアーに参加することになりました。
夜行バスに乗っていざ出発!
今回は金曜の夜に夜行バスで東京を出発し、朝から夕方まで尾瀬散策、夕方から夜にかけて東京に戻る日帰りツアーを申し込みました。バスは小型バスで4列シート。車内で充電できなかったのが辛い。
出発の日の金曜日は「梅雨明け宣言を撤回しては?」と思う程の土砂降りの雨。本当に決行するのかという不安も抱きつつも、一応バスの集合時間の頃は小雨に変わっていました。果たして尾瀬はどうなる事か‥‥そんな不安を抱きながらバスに乗り込み、いざ出発。
途中、2回の休憩を挟みながら朝4時に尾瀬高原ホテルに到着。ここでオプションで頼んでおいた「舞茸弁当」を受け取ります。
鳩待峠に到着。名物の「舞茸ご飯」でエネルギーチャージ!
今回は、「ザ・尾瀬」のイメージである尾瀬ケ原を散策するコース。朝6時、ようやく尾瀬ケ原コースの出発地点である鳩待峠(はとまちとうげ)に到着。無料休憩所もあり、ここで朝ごはんを食べたり、荷物やウェアなどの装備の準備をします。
休憩所の食堂・売店は朝6時はやっていませんが、休憩スペースは利用できるので、ここで朝ごはん。先ほどのホテルで受け取った舞茸ご飯をいただきます。
実は正直期待してなかったんです(ごめんなさい)。こういうツアーでついてくる弁当に感動することってないじゃないですか?「まぁ話のタネになれば」程度の気持ちでつけたけど、「おこわ」のようなモチモチした感じで美味しかった!!舞茸ご飯は初めて食べたけど、こんなにご飯のおかずになるとは!
分量も多すぎず少なすない適量で、腹持ち最優先という感じ。コンビニでおにぎりとかで売ってたら結構ハマってリピートするかも。
いざ出発!最初はただの登山(下り)
勝手に尾瀬は、バスを降りてちょっと歩けば、すぐにあの広い湿原(尾瀬ヶ原)に行くことができるものだと思っていました。しかし、そこに行くにはまず1時間強、山の中を歩き続けなければいけなかったのです。
途中には渓流(川上川)もあって、「これって普通に登山じゃない?」「今これだけ山を下るなら、帰りはこれを登るってことだよね??」と友人と「こんな話聞いてないよ~」と言いながらとにかく進みます。
この尾瀬初体験な1日で最大の驚き(衝撃)だったのが、ナメクジがでかい!!!!ちょっと小ぶりなバナナ位の大きさ。しかも結構いる。ナメクジが苦手な人は覚悟をしておいてください(笑)
尾瀬ヶ原、それは日本の桃源郷
1時間ほど山道を歩いて、山ノ鼻ビジターセンターに到着。ここでトイレ休憩。尾瀬ではトイレは寄付制になっており1人1回100円をトイレ入り口の寄付金箱に入れて利用します。
この寄付金は、尾瀬の保全活動(木道の整備や植物の状態保存、トイレなどの施設の維持)のために使われます。トイレは水洗式で、思っていたよりもきれいでした。「山の中にあるトイレは汚くてもしょうがない」と覚悟を決めていましたが、気持ちよく利用できました。皆さんの日々の運営がありがたい。
そして、トイレ休憩を済ませてしばらく歩くと、とうとう目の前にあの「尾瀬の風景」が!!!見渡す限の緑。前方には燧ヶ岳(ひうちがたけ)、後方には至仏山(しぶつやま)と、2つの大きな山の間に広大な平野(湿原)が広がります。
北海道ならいざ知らず、この本州にこれほど見渡す限りの平らな空間があるという事に驚きました。誰だ?日本を狭いと言ったのは?
心配だった雨は、ありがたいことに全然降らず、また曇り空なのでカンカン照りの暑さでもなく、散策にはちょうどいい天候でした。朝のひんやりとした清々しい空気を一杯に吸い込み、雄大な景色のただなかにいることを全身で味わいます。
おのずと口から「桃源郷みたい」という言葉が出ていました。
思えば「桃源郷」の言葉の由来となった物語も、漁師が桃の木の林に迷い込み、洞穴を抜け出た先にあった世界ということだから、深い山を分け入った先に広がるこの尾瀬の世界もまた「桃源郷」と言うに相応しい場所でしょう。
私と友達の間で「オフィーリア」と名付けたこの水中で流れる鬱蒼とした水草の光景。オフィーリアが浮かんだ川もこんな感じではなかったかと想像したくなります。
オフィーリアについてはこちらの記事が分かりやすいです(この中で紹介されているミレーの絵が私と友人との間のオフィーリアイメージ)。
熊も出没!
尾瀬ヶ原に来るまでの山道で、何度か熊鈴(熊が近づかないように鳴らす鈴)があって、「熊が出るんだね~」と呑気に友達と話していたら、何と本当に熊を発見!!!
施設の人も熊の動向を窺っている様子で、私たちがいた限りでは具体的に何をするという事ではなく、監視をしている感じでした。ちょうど近くに監視の方がいる時で、熊も遠いところにいたから特に恐怖はなかったけど、これがもう少し奥の山道だったら…と思うと、「大自然の美しさ」と表裏してある「危険」についてもきちんと知った上で楽しまないと思いました。
7月の見どころはニッコウキスゲ
「夏の思い出」にも登場する、尾瀬を代表する植物「水芭蕉」のシーズンは既に終わっていますが、7月はニッコウキスゲが満開を迎える季節。山吹色の花が緑によく映えます。
満開の見頃は過ぎていましたが、所々でアヤメやカキツバタが咲いていました。カキツバタに木道ーー『伊勢物語』の「八ツ橋」を思い出します。在原業平が三河の八ツ橋で詠んだ「からころも 着つつなれにし つましあれば はるばる来ぬる 旅をしぞおもう」の歌は有名ですね。
場所は違いますが、在原業平がみた八ツ橋の風景とはこんなものだったのかな…と、業平の旅を追体験するかのような心地にもなりました。
おわりに
朝6時~午後3時まで、ほぼ歩きっぱなし。もちろん所々で休憩を挟みましたが、これほど歩いたのは何年ぶりだ?という位歩きました。友人のiPhoneの万歩計では3万歩は歩いたみたい。
行きの段階で覚悟していた、帰りの山登り…なかなかハードでしたが、無事にバスの集合時間の50分前には最初の鳩待峠に到着。約9時間歩き続けたご褒美に、尾瀬の名産「花豆」を使った花豆ソフトクリーム(500円)を堪能!小豆ソフトクリームよりも主張控えめな味でこれもまた美味しかった!!!
疲れた体にソフトクリームの甘さが染み渡る。
自分のお土産には花豆甘納豆(540円)とギョウジャニンニクの漬物(640円くらいだったはず)。甘納豆は大粒でしっかりした味わいでこれもまた美味でした。
これで私も夏が来れば思い出すことができるでしょう。雄大な景色、ニッコウキスゲの山吹色、オフィーリアな水草、熊、でかいナメクジ‥‥でかいナメクジ…
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