【レビュー】新作歌舞伎「刀剣乱舞 月刀剣縁桐」 ※ネタバレ注意

舞台・映画

「刀剣女子」なる言葉も生まれ社会現象ともなったオンラインゲーム「刀剣乱舞」。日本刀を擬人化したオンラインゲームで、2016年にリリースされて以降、女性たちを中心に絶大な人気を集め、キャラクターになった刀剣が美術館などで展示されると軒並み行列になるほどの人気ぶりです。

またアニメ、映画、舞台と様々なエンタメへと展開し、そのいずれもがヒットへとつながっている中、2023年、満を持して「歌舞伎化」されました。

実際の刀剣の伝承や逸話をベースにしている刀剣乱舞ですから、歌舞伎との相性はいいはず。いつか歌舞伎化しないのかなとずっと思っていただけに、今回の歌舞伎化は「ようやく」と言ったところ。

この記事では、開幕早々見に行くことができたので舞台のレビューも含めて新作歌舞伎「刀剣乱舞」を紹介します。

あらすじ

まずは、今回の舞台のあらすじを紹介します。

次期将軍である足利菊幢丸と妹の紅梅姫の命を奪おうと、時間遡行軍が襲い掛かりますが、三日月宗近たちがこれを防ぎます。やがて松永弾正の助力もあって菊幢丸は元服し、足利義輝を名乗って将軍となりますが、魔物に取り憑かれてしまいます。
 一方、弾正の嫡男の松永久直はそんな義輝を諫めますが……。

公式HPより

刀剣男子たちは2205年の世界におり、審神者(さにわ:ゲームにおけるプレイヤー)のもとに召喚された刀の付喪神です。彼らは、過去の歴史を改変しようとする歴史遡行軍の所業を阻止するために、過去の時間に戻って歴史遡行軍らと戦います。

刀剣男子たちは、織田信長や豊臣秀吉など実際の武将らが所持していた刀などをモデルにしているので、当然過去に戻るということは、元の主がいる世界に行くこともあるということです。

そしてことのことが、三日月宗近の心を曇らせていきます…。

人物(刀剣)相関図

ゲームをしたことない人は、刀剣男子、歴史上(室町時代)の人物たち、歴史遡行軍の関係性が分かりづらいかもしれないので、簡単に今回の人物(刀剣男子)相関図を書いてみました。

レビュー

※以下、ネタバレ有りです。ご注意ください。

まず一番気になっていたビジュアルは、あえて原作のイラストに忠実にしなかったことが功を奏していているというのが第一印象。それぞれの刀剣男子のイメージは残しつつ、ゲームや2.5次元舞台などとは「別物」という立ち位置を明確にすることで、実写化でどうしてもファンから出てしまう「原作とは違う!」という拒否反応を回避しているし、何なら「歌舞伎だとどうなるの?」という期待値まで上げたように思います。

個人的には三日月宗近が右近さん、小狐丸が松也さんのニンな気がしていたので、このキャスティング合ってるのかな?という不安があったのですが、実際に物体に立つ松也さんを見ると、どんどん「三日月宗近」に見えてきた。(小狐丸もビジュアル完璧なのに…そもそも本編での登場がどうしても少なくなってしまったのが残念(笑))

さて、物語の内容・構成ですが、全体的に非常にスッキリとまとまっていて、「刀剣乱舞」(以下、とうらぶ)と「歌舞伎」の融合が果たせていたと思います。歌舞伎の演目にも登場する刀もある分、もっと歌舞伎や歴史の小ネタが随所に入ってくるかと思ったら、それを前面に出すようなセリフや演出はなく、メインとなる”永禄の変”の物語に筋を絞っていました。(冒頭の鍛刀のシーンは小狐丸誕生の逸話を題材にした『小鍛冶』を準えているとは思いますが)

演出面でも「古典」と「現代(ゲーム)」のバランスがちょうどよく、一幕目ではワイヤーアクションを使うなど現代的な演出が強めですが、2幕目はほぼ「古典」の世界観で、今回が歌舞伎デビューの人でも「入りやすく、気づけば歌舞伎の世界にどっぷり浸かってた」となるように構成されていたように思います。

特にクライマックスの三日月宗近と足利義輝の立廻りの場面では、舞台装置や殺陣は古典のそれながら、幻想的なBGMによって映画のスローモーションのような効果が生まれ、古典歌舞伎を観る時の重厚感(『義経千本桜 大物浦』の平知盛さながらの最期)を味わいつつ、”刀剣男子と元主の悲しき宿命”という「とうらぶ」の世界観(現代的な感覚)でも感情移入しやすくなっていて、印象深いクライマックスだったと思います。

よもつ
よもつ

このシーンは本当に歌舞伎の古典の様式と現代の感覚が融合したと感じました!!!

一方で、個人的には少し小綺麗にまとまりすぎた気もして、もう少しゲーム「刀剣乱舞」の設定が盛り込むなど”遊び”の部分があっても良かったかなと思いました(最近はほとんどゲームをしていなかったので、私が気付かなかっただけかもしれませんが)。

「刀剣歌舞伎はゲームの設定にこだわらない」というのがあったかもしれないけれど、たとえば立廻りで刀剣男子たちがゲーム中で発する台詞を入れたり、一幕目の終わりは「刀剣男子たちが戦いに敗れ(重傷になって)一度本丸に撤退する」⇒「幕間(休憩時間)」という流れにして、ゲーム中の設定を盛り込んだりすれば、ゲーム未経験者にも違和感なく「そういうシーン」として観ることができるし、ゲームファンは「これこれ!」となったのでは。

また刀剣男子同士の関係性を掘り下げるなど、審神者たちへのサービスがあっても良いかなと思いました。ゲームでも回想シーンで刀剣男子たちが自身の過去と向き合ったりするシーンがあるし、負傷したイラストを出すのが楽しみでもあるので、負傷する刀剣男子たちも見たかった。(小烏丸と宗近で少しありましたが、他のキャラとのやり取りをもっと見たかった)

物語のメインが義輝と弾正の物語だから仕方ない部分もありますが、それと同時に「宗近(刀剣男子)」の物語でもあるので、せっかくあれだけのビジュアルを完成させたのだから「立廻りからの見得」だけで刀剣男子たちを出すのではなく、刀剣男子同士でのやり取り(任務に対して迷いがある宗近と、周囲の反応)がもっとあったらな…と。

まぁこれは既にストーリーが良かったので、さらに欲を言えば、ということです。

よもつ
よもつ

1幕目のラストで刀剣男子のキャスト陣による楽屋オチの小ネタも面白いけど、決戦に敗れて「手入れ」が必要だけど、太刀だから3~4時間かかってしまう⇒それはできないから手入れ札を使って30分に短縮しましょう(=幕間の30分)!という流れでも面白かったかも!

2階ロビー展示は必見!歌舞伎に登場するあの「名刀」も展示中

劇場の2階では、歌舞伎の『寿曽我対面』の十郎・五郎兄弟の衣裳に、歌舞伎の演目で登場する「小狐丸」「小烏丸」をはじめ名刀が展示されています。

「極」お弁当でいっぷく

劇場内では、刀剣乱舞にちなんだオリジナル弁当「極」(1,500円)とアイス(600円)も販売中。当日その場でも買えますが、人気のため開場早々に完売してしまうことも。

実際私も平日に行きましたが、平日だからと言って侮ってはいけなかった。目当てだったアイスは早々に完売していました。値段がお高めということもあって「極」弁当の方は買えたのですが、開演前には完売してしまっていたので、絶対に食べたいという方は事前予約をおすすめします。

新作歌舞伎「刀剣乱舞」特製弁当「極」

一番右のおかずは今回の刀剣男子6振をイメージしているのだとか。個人的には髭切をイメージした枝豆とうふが美味しかったです!!

三色団子もあって「よきかな、よきかな」

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